暖房設備でありながら調理場でもあるのが囲炉裏です。
炭火だけでなく、薪を燃やすことで調理の幅も広がります。
例えば灰に串を刺して直火焼きにしたり、灰の中で蒸し焼きにしたり。
基本的には室内での「焚き火」なので、キャンプと同様の調理が可能です。
囲炉裏での料理法

囲炉裏での料理といえば、鍋での「煮込み」や灰に刺した串での「炭火焼き」。
炭火だけではなく、直火も使えるので、ゴトクを置いて「炒め物」も可能です。
さらに煙を活かした「燻製」や、灰の中で「蒸し焼き」もできます。
厚手の蓋つき鍋ダッチオーブンを使えばパンを焼いたりローストしたり。
囲炉裏の近くにある土間は発酵食品に適した環境で、漬け物作りもできます。
【自在鉤に鍋をかけて煮込み料理】

囲炉裏での料理で特に作りやすいのが「煮込み料理」。
ごくごく弱火で長時間じっくり煮込むことができるからです。
「自在鉤」の高さを変えることで火力の調節ができます。
新しい薪を入れなければ、囲炉裏の火は自然と小さくなっていきます。
ですから放置したままでも焦げつく心配がありません。
フキやウドなどの山菜を煮たり、おでん、カレー、シチューが美味しくできます。
弱火で煮込むジャムや、じっくり煮込む煮豆などには最適です。
燻炭で保温されているため、味が沁み込んで美味しく仕上がります。
【囲炉裏にゴトクを置いて鍋・フライパン料理】

囲炉裏の灰の上にゴトクを置くと鍋やフライパンが使えます。
炎の上で強火の炒め物をしたり、炭の上で弱火にしたり。
焼き網を載せて餅を焼いたりもできます。
ゴトクは、3個の「石」や「空き缶」を灰に置くことでも代用できます。
発酵の手間がいらないチャパティやトルティーヤなら簡単。
チャパティはインドの薄焼きパン。
トルティーヤはメキシコ料理に使う薄焼きパンです。

簡単に作れて、冷凍保存できるサルサソースとトルティーヤ。サルサソースは材料を煮詰めるだけ。トルティーヤは小麦粉を練ってフライパンで焼くだけです。
石臼があると家庭菜園で作った蕎麦や小麦を製粉できます。

天然の酵母を使ってのパン作りもできます。

天然酵母は身近な食材から簡単に作れます。酵母菌は、身の回りで自然に生きている微生物だからです。
ダッチオーブンを使うとピザやパンも焼けます。

厚手の鍋に蓋をして、上に燻炭を乗せ、上下から加熱します。
ステンレス3層鍋や鉄のフライパンと、燻炭を乗せられる金属製の蓋でも代用できます。
厚手のステンレスや鉄鍋に丸めたアルミホイルや石を敷きます。
その上にアルミホイルを敷いてパン生地を乗せ、蓋をします。
鍋を弱火にかけ、蓋の上に燻炭を乗せるとオーブンに。
【囲炉裏の灰に埋めて蒸し焼き】

囲炉裏の灰に食材を入れて蒸し焼きもできます。
- ジャガイモやサツマイモをそのまま灰に入れて焼き芋に
- クリやギンナンなど木の実をアルミホイルに包んで灰に入れる
- パン生地を串に巻いて炎の近くに立て、回しながら焼く
- 魚や肉を串に刺して火の近くに刺して焼く
●調理後の匂い消し法
囲炉裏で調理した後は、灰の匂い消しが必要です。
肉や魚を調理すると脂や汁が落ちて灰に臭いが残るからです。
煙や臭いは工夫次第で軽減できます。
匂い消しの方法は、囲炉裏の中で「月桂樹の葉」や「エゴマの茎」を焚くのが効果的。
香りの良い木やハーブを燻しても匂い消しになります。
こんにゃく作りに木灰を使う方法もあるそうです。
- たっぷりの木灰を沸騰した湯に入れて、よくかき混ぜる
- 粗熱が取れるまで放置し、キッチンペーパーなどで濾す
- コンニャク芋の皮を剥き、3倍の量の湯を火にかける
- すりおろしたコンニャク芋を湯に入れて、よくかき混ぜる
- 少し糸を引くようになったら灰汁を入れる
- 固まったら火から下ろし、冷まして切り分ける
- もう一度お湯に入れて茹で、浮き上がってきたら出来上がり
こんにゃく作りの方法も調べてみました。

かつては「こんにゃく芋」と「わら灰」を使って家庭でコンニャクが作られていたそうです。ですが現在は、こんにゃく芋も、わら灰も、都会では手に入りにくい材料。手作りするなら代替品の「精粉」と「凝固剤」を使います。
囲炉裏の灰ではうまく固まらないそうですが、試してみたいです。
【囲炉裏の直火で炒る種子や豆類】

ゴマやエゴマの種を採ったら囲炉裏の直火で炒ることができます。
実を天日干しで乾燥させ、手で揉んで殻を砕くとタネが取れます。

これをゴマ炒り器に入れます。
揺すりながら直火に当てるだけ。
ラッカセイは天日干しし、
直火で炒るだけで食べられます
ギンナンは殻を割らずに、時間をかけて炒るとカリっとします。
ステンレス製のゴマ炒り器が便利。
フライパンで炒るより、ムラなく簡単に炒ることができます。
炒った種子や木の実は、すり鉢とサンショウのすりこぎで潰して使います。
山椒は薬効のある木なので、すりこぎとして使うのにも最適。
大小あると便利ですが、17~18cmくらいが使いやすい長さです。
少しずつ削れて食品に混ざり、食べても安心です。
【土間で作る発酵食品】

囲炉裏の近くにある土間は漬け物を作るのにも適しています。
目につく場所に置いてあれば、毎日かき混ぜるのを忘れずに済みます。
ぬか床には20~25℃くらいの涼しい気温が最適。
夏は冷蔵庫の野菜室に入れた方が管理しやすくなります。
ただし冷蔵庫では温度が低くなりすぎ、だんだん乳酸菌が減ってきます。
気温が25℃を超える時期だけ冷蔵庫に入れて。
それ以外は常温で管理するほうが早く漬かり、美味しくできます。
- 大根は干しておく
- すりおろした生ウコン、赤トウガラシ、乾燥させたナスの葉、干したカキの皮、自然塩、米ぬかをよく混ぜる
- 大きな樽に大根を隙間なく詰め、ぬかをかけてから2段目を詰める
- 大根とぬかを交互に重ねたら木の中蓋を乗せ、石を乗せる
ぬか漬けを美味しくするのは乳酸菌の働き。
乳酸菌が減ると、酸味や旨味も減って、塩からい漬物になってしまいます。
自然農で育てた野菜や穀類には天然酵母が生きているので発酵食品がよくできます。
囲炉裏で料理する時の道具

囲炉裏での料理には、キャンプで使うような道具なら何でも使えます。
例えば串焼き、網焼きの道具などです。
炭や薪を動かす「火箸」は「トング」などで代用できます。
灰をすくうための「シャベル」も必要です。
表面を平らにならす「レーキ」のようなものもあると五徳を置きやすくなります。
【自在鉤】
上から鍋を吊るす「自在鉤」は囲炉裏に特有の道具。
ヤカンを吊るしてお湯を沸かしたり、鍋を吊るして煮物を作ります。
灰の上で調理するための道具もあると焼いたり蒸したりができます。
【五徳】
五徳があれば一般のキッチンで作るような料理がほぼ可能になります。
フライパンでパンケーキを焼いたり、炒め物をしたり。

ハナワは底が丸く、上向きに脚がついているもの。
脚が灰に埋まらないので、重たい鍋を乗せるのに適しています。
長方形の五徳は、鍋と直火焼きの両方ができます。
囲炉裏の使い方がよく分かる、おすすめの本。
著者がイラストレーターなので、挿絵で詳しく解説してあります。
実際に囲炉裏を使った経験を元にしているので、とても具体的な内容です。
囲炉裏にはメリットばかりではありませんが、その魅力に夢中です。

洋風の暮らしのほうが合理的で快適だと思っています。けれど囲炉裏だけは生活に取り入れてみたいと思うほど夢中。理由は「経済性」「機能性」「快適性」の3点です。とはいえデメリットがないわけではありません。











