囲炉裏の構造は、実に原始的でシンプル。
縄文時代の竪穴式住居で使われていたものが原型です。
喩えるなら「不燃材」で作られた「床下収納庫」のような形。
地面に「穴」を掘って「石」で囲った「炉」が原始的な囲炉裏です。
古民家にも、土間の地面に穴を掘っただけの炉が残っている場合があるといいます。
囲炉裏・火鉢・七輪の違い

室内で火を使う設備には、囲炉裏の他に「火鉢」や「七輪」もあります。
囲炉裏と火鉢や七輪の違いは、設置の仕方です。
- 床上に「置く」「移動できる」のが火鉢と七輪
- 住宅の「設備」として「固定」されているのが囲炉裏
市販されている「囲炉裏テーブル」は本来「長火鉢」と呼ばれるもの。
囲炉裏は移動できない住宅設備です。
火鉢と七輪は、使用目的が異なります。
- 火鉢は「暖房設備」で「灰」の上で「炭」を燃やす
- 七輪は「調理器具」で「炭」を燃やす
- 囲炉裏は「暖房と調理」兼用で、「灰」の上で「薪」を燃やす
暖房用の「火鉢」と「囲炉裏」には「灰」を入れて使います。
灰に蓄熱して暖房効率を高めるためです。
調理用の「七輪」と「囲炉裏」は「火力調節」ができます。
七輪は開閉できる「通気口」から入る「空気の量」によって火の大きさを変えます。
囲炉裏は上に吊り下げた「自在鉤」の「高さ」によって火からの距離を変えます。
囲炉裏の特徴は「薪」を燃やすことです。
あえて「煙」を出すことで、木造家屋の湿気や虫を取り除きます。
囲炉裏の構造

囲炉裏の構造は「焚き火台」を「床下」に作ったようなイメージ。
原型は土間の「地面に掘った穴」です。
住宅の「床板」が燃えないよう、不燃材料で囲いを作ってあります。
- 囲炉裏に入れる「灰」
- 周囲に枠を取り付けた「炉縁」
- 天井に吊り下げた「火棚」
- 火棚から吊り下げた「自在鉤」
それぞれに役割があります。
【囲炉裏に入れる「灰」の役割】
灰の役割は「蓄熱」すること。
囲炉裏や火鉢の主な使用目的が「暖房」だからです。
薪や炭を燃やすと、灰も700℃という高温になり、熱を溜め込みます。
囲炉裏は床下の穴に灰を入れるため、足元から温まる「床下暖房」です。
灰の上で火を燃やすことには、他にもメリットがあります。
- 薪がすぐ燃え尽きないため、細い枝なども使える
- じっくり燃えた薪が炭になる
昔話には、山で「柴刈り」するシーンがよく登場します。
これは地面に落ちている細い「枝」などを集めて、薪として使うためです。
よく乾燥した枯れ枝は、すぐ使える薪として重宝します。
灰は、調理する場としても使われます。
- 高温になっている灰の中に食材を入れて、蒸し焼きにする
- 灰の上に「五徳」を置いて、炒め物などをする
- 魚や野菜を刺した「串」を灰の中に立てて、直火で焼く
囲炉裏は室内で焚き火しているようなものなので、バーベキューのような調理が可能です。

囲炉裏での料理といえば、鍋での煮込みや灰に刺した串での炭火焼き。けれどゴトクを置いて炒め物なども可能。炭火だけではなく、直火も使えるからです。
【周囲に枠を取り付けた「炉縁」の役割】
囲炉裏の周囲を囲った枠は、灰が室内に飛び散るのを防いでいます。
ですから床板より少し高くなっています。
囲炉裏に入れる灰も、炉縁より10cmほど下までです。
少し高さのある炉縁は、飲食するための「テーブル」代わりにもなります。
炉縁の幅を広くすると食器を置きやすくなります。
けれど広すぎると火から遠くなり、温かさも届きにくいため、10~20cm程度です。
この枠の部分を高くしたのが「囲炉裏テーブル」や「長火鉢」です。
椅子で使えるので便利ですし、移動もできます。
【天井に吊り下げた「火棚」の役割】
囲炉裏の真上に吊り下げた「火棚」は、火の粉が天井に飛ぶのを防いでいます。
それと同時に、吹き抜け天井へと熱が逃げるのも防ぎます。
上昇した熱が火棚に当たって反射し、暖かい空気が部屋の下へと流れるからです。
火棚には、濡れたタオルや衣類を掛けて乾かしたりもします。
【火棚から吊り下げた「自在鉤」の役割】
自在鉤は、ヤカンや鍋を吊り下げる道具です。
「高さ」を調節することによって、火からの距離を変え、火力を調整します。
- 低くして鍋を火に近づけると、強火
- 高くして火から遠ざけると、弱火
煙が上に昇るのを利用して「燻製」を作ったりもします。
囲炉裏部屋の構造

囲炉裏は「薪」を燃やす「固定」した「暖房」兼「調理」設備。
煙が室内に充満しないよう、囲炉裏部屋は天井が高い「吹き抜け」が一般的です。
屋根裏に充満する煙は、木造家屋の除湿や虫除けに役立っています。
そして屋根には、煙を外へ出すための「排煙窓」が設置されています。
囲炉裏そのものは作るのも簡単ですが、設置場所の構造が肝心です。

木造家屋であれば囲炉裏を手作りすることも可能。なぜなら囲炉裏の構造は、とてもシンプルだからです。例えるなら床板を四角く切り取って「床下収納庫」を作るイメージ。
囲炉裏部屋では夏でも火を絶やしません。
室内に「対流」を起こして風を取り込むからです。
煙で虫除けし、湿気を取り除くことで、夏の室内が快適になります。

夏の室内で火を焚いても暑くないのでしょうか? そんな疑問が湧いてきますが、むしろ涼しく過ごせるそうです。それは「湿気が取り除かれ」「風が通り抜ける」から。
実際に囲炉裏を使っている人によると、良いことばかりではありません。
室内が汚れるし、薪や炭を扱う手間も費用もかかります。

洋風の暮らしのほうが合理的で快適だと思っています。けれど囲炉裏だけは生活に取り入れてみたいと思うほど夢中。理由は「経済性」「機能性」「快適性」の3点です。
囲炉裏についての参考書が『囲炉裏と薪火暮らしの本』。
イラストレーターの著者による、分かりやすい図解とイラスト入り。
火や薪の使い方、灰の活用方法など色んな知恵が満載です。
薪割りの仕方や森から木材を切り出す方法なども紹介されています。
この本を読んで囲炉裏の良さを知り、囲炉裏のある家に住みたくなりました。
山で暮らす経験をもとにした知見が豊富で、とても参考になります。
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