堆肥の効果は、大別すると「土壌改良」と「肥料効果」の2つです
そのため目的に応じて堆肥の種類は異なります
例えば、植物を植える前には土壌改良、植物が成長する時期には肥料として
そして土壌改良と肥料とでは、堆肥に使う材料も違います
堆肥の効果による土壌改良
土壌改良が目的の場合は、肥料分よりも繊維質が多い堆肥が適しています
なぜなら養分が多いと、病原菌や害虫も集まってくるからです
例えば、水はけなどに問題がある場合に土壌改良を行います
そういった土では、植物も弱っていることが多いものです
そのため養分に集まってくる病原菌や害虫に負けてしまいます
まずは繊維質が多い堆肥を土に入れて、水はけなどを改良することが大事です
【植物にとって理想的な土】
植物にとって理想的なのが、保水性がありながら水はけも良く、通気性があり、養分も貯えている土です
そんな土は「団粒構造」になっています
団粒構造とは、ひとかたまりの「団子」が、養分を蓄えた「粒」でできている状態です
例えば、団子と団子の間に隙間があることで、通気性も、水はけも良くなります
すると、その隙間に植物の根が伸びて、団子の中に蓄えられた水分や養分を吸収します
【堆肥での土壌改良】
団粒構造の理想的な土を作っているのは、土の中にいる土壌生物です
例えば、みみずは土を食べて細かく砕き、動き回って土に隙間を作ります
そして土壌生物たちの排せつ物が、植物の養分となります
そして堆肥による土壌改良を行うと、病原菌が減ります
なぜなら微生物の種類が増えることで、バランスが取れるからです
微生物たちが土の中から養分や水分を運んできてくれるので、肥料も水やりも必要なくなっていきます
【堆肥の効果が得られる時期】
堆肥は「植物を植える前」や「成長が止まっている時期」に土に混ぜておきます
例えば秋に堆肥を入れておくと、春の植え付け時期までには土が改良されています
- 野菜の収穫が終わった時期
- 植物が休眠する秋~冬
- 植物を植えつけする前の時期
使い方は「堆肥3:土7」くらいの割合で混ぜ、「1週間」くらいおきます
土壌改良を目的とした堆肥は、家庭でも作ることができます
材料が、野菜クズや庭の雑草など、家庭でも手に入りやすい植物性だからです
土壌改良の目的で堆肥を使う場合は、植物性の堆肥が適しています。なぜなら植物性堆肥は、窒素などの養分や微生物のバランスがいいからです。それに比べ動物性堆肥は、養分が多いだけに病原菌や害虫も集まってきます。
それに対して、肥料効果の高いのは動物性の堆肥です
肥料効果の高い堆肥
動物性の材料を使った堆肥は、養分が多く、肥料効果が高まります
例えば「牛糞」や「鶏糞」などが動物性の材料です
とはいえ家庭では手に入りにくいため、一般的には市販のものを使います
【植物にとって必要な養分】
植物が必要とする養分は主に「窒素」「リン酸」「カリウム」で、これが肥料の三大成分です
特に窒素は、植物の枝葉を育てる大切な養分となります
そのため肥料効果の高い堆肥を作る場合にも、窒素分の多い材料を使います
特に窒素分の多い材料が「油かす」「米ぬか」「鶏糞」です
肥料の堆肥を作る時には、材料を使い分けると効果を上げられます。なぜなら材料によって含まれる肥料成分が異なるからです。例えば、肥料の三大成分が「窒素」「リン酸」「カリウム」です。これらの含有率が多い有機物を使うことで、目的別の堆肥を作れます。そして植物の成長段階に応じて、必要な成分を補うことが可能です。
【堆肥による肥料効果】
堆肥の肥料効果は緩やかで、即効性はありませんが、長く持続します
植物は、堆肥そのものを吸収することができないからです
土壌生物が堆肥を消化して分解し、排泄することで、植物が吸収できる養分となります
堆肥が土壌生物によって完全に分解されるには、1カ月くらいかかります
その間に養分が、少しずつ、持続的に提供されます
【肥料効果の高い堆肥を入れる時期】
肥料効果の高い堆肥は、植物が成長する時期に合わせて与えます
例えば、枝葉を伸ばし始める「春」です
特に窒素は枝葉を育てる養分なので、効果的に働きます
多くの養分を必要とするバラ栽培に効果的なのが、牛糞堆肥です
牛糞堆肥は「バラの寒肥」に適しています。それは牛糞堆肥に含まれる「アンモニア」はバラが好んで吸収する成分だからです。バラが休眠している冬に土を掘って混ぜておくと、ゆっくり長く効果が続きます。牛糞堆肥には繊維質も豊富なので、土を柔らかくする効果もあります。
堆肥を使う時の注意点
植物の植え付け直前に入れる堆肥は、発酵が完全に終わった「完熟」であることが大事です
堆肥が未熟だと、土の中で発酵が始まり、熱やガスを発生することがあるからです
未熟な堆肥には病原菌や害虫も集まってきます
【プランターで堆肥を使う場合】
プランターの古い土に堆肥を混ぜる場合には、土を消毒しておくことも大事です
病原菌や害虫の卵が混ざった土に堆肥を加えると、病害虫が増える原因となるからです
夏なら「透明のビニール袋」か「黒いビニール袋」に入れ、「2~3日」ほど「直射日光」に当てます
土を取り出してプランターを洗っておくと、病原菌も取り除けます
プランターで育てている植物は、定期的な植え替えすると元気に育ちます
固まった土をほぐし、堆肥を混ぜて養分を補充するためです
- 植えてある植物は、枝葉を切って整理しておく
- 取り出したら根も切って整理し、根が乾かないよう紙などで包んで保護しておく
- プランターの土を「ふるい」にかけ、鉢底の小石を分ける
- 再利用する土に堆肥を混ぜる
- 取り出した小石をプランターに敷いてから土を戻して植え付けする
植え替えで切った枝葉や根も堆肥作りに使えます
ただし病害虫が付いている場合はゴミとして処分します
【畑や庭の土に堆肥を入れる場合】
庭土の場合も、堆肥を入れる前に土を消毒しておくと病害虫を減らせます
例えば、スコップで掘り起こして直射日光に当てておくと消毒できます
冬ならビニールシートに広げた土を屋外に放置しておけば、寒さで病原菌は死滅します
畑や庭の土に堆肥を入れるなら「秋から冬」が適しています
真夏に堆肥を入れると、病害虫が増える原因となるからです
堆肥は「植物の根と直接触れない」場所に入れます
これは堆肥に集まってくる病原菌や害虫から遠ざけるためです
植物は、堆肥そのものを吸収できるわけでもありません
まずは土を掘り出し、底のほうに堆肥を入れ、土をかぶせてから植物を植えます
植え替えせずに堆肥を加える場合には、少し離れた場所に堆肥を入れるのが効果的です
そうすると植物は、養分を求めて根を伸ばすからです
【石灰を使う場合の注意点】
牛糞や鶏ふんなど「動物性の堆肥」を使う場合、「石灰」は後から土に加えます
動物性の堆肥と石灰が混ざると、「ガス」が発生して「窒素分」が抜けるからです
肥料効果が薄れるだけではなく、ガスによって植物にダメージを与えることがあります
消石灰や苦土石灰を使用した場合に化学反応が起きてガスが発生します
牡蠣殻など「有機石灰」であれば、化学反応はおきません
石灰は、ペーハー調整のために土に加えます
雨が多い日本は土が酸性に傾きがちなので、アルカリ土壌を好むハーブ類を植える時に必要な調整です
土のミネラル分が、ペーハーに関係しています。ミネラルが多いほど「アルカリ」度が高く、少ないと「酸性」度が高くなるからです。
【堆肥の保存法】
出来上がった堆肥は「麻袋」などに入れ、乾燥しないようにして保存しておきます
保存中は「2週間に1度」くらい混ぜて空気を入れておくと腐敗を防げます
1年以上も保管していると養分は減ってしまいますが、通常の土としては使えます
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コンポストは堆肥、コンポスターは堆肥を作る容器を意味する英語です
家庭で作る場合には、虫や臭いが発生しない材料や作り方が適しています
堆肥とは、肥沃な土を作る堆積物で、山や森などでは自然と作られています。なぜなら落ち葉などの有機物があり、それを分解する土壌生物がいるからです。それを人工的に作る時には、早くできるよう、水分や空気の量を調節します。さらには、不快な腐敗臭や虫などを抑える工夫も大事です。
【コンポスター】
臭いを抑えられれば、キッチンなど室内でも堆肥作りがしやすくなります
生ごみ堆肥を室内で作る場合には、密閉できる容器を使います。空気を遮断することによって、腐敗臭を抑えるためです。腐敗せずに「発酵」すれば、嫌な臭いはあまり発生しません。そのためには空気を嫌う「嫌気性」の微生物を増やすことがポイントです。
庭など屋外で堆肥を作る場合には、木枠コンポスターが便利です
堆肥作りを手早く、簡単にできるのが、木枠を使ったコンポスター。廃材でも作れ、材料の上下を入れ替える「切り返し」作業も楽にできます。邪魔にならない場所に集めておくだけで、土壌改良に使える堆肥になります。田舎暮らしや庭づくりを始める時、まず必要なのが草刈りや庭木の剪定です。そんな刈り取った草や、木の枝を有効活用できます。
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