【土作り】堆肥の作り方・材料・道具・注意点

堆肥を作る時に大事なのは、有機物を十分に「発酵」させることです。

完熟していない堆肥を土に混ぜると植物の根を傷めることがあるからです。

微生物が有機物を分解すると、腐敗や発酵が起こります。

どんな有機物でも、放置しておけば腐敗して、最終的には土に還ります。

堆肥とは、有機物を腐敗させずに「発酵」させたものです。

発酵と腐敗の違いは、人にとって有益か有害かという点です。



堆肥を作る微生物の種類

地面に置いた木枠とコンポスト材料

土中で「腐敗」が進むと、酸素不足になり、有益な土壌生物が死んでしまいます。

腐敗臭を抑え、有害物質を無害化するために必要なのが、微生物のバランスです。

微生物には、酸素を好む「好気性」と、酸素を嫌う「嫌気性」の2種類がいます。

  • 好気性菌(酸素がある場所でのみ活動する)
  • 嫌気性菌(酸素がない場所でのみ活動する)

どちらも有機物を分解して栄養素に変える細菌です。

けれどバランスが崩れると、発酵ではなく腐敗になってしまいます。

生ごみを放置した時に嫌な臭いを発生させるのが「好気性」の微生物です。

好気性の微生物によって分解は早く進みますが、悪臭が発生します。

そのため堆肥を作る場合には嫌気性の微生物を増やす方法が一般的です。

水分が多すぎると、酸素不足によって微生物が死滅し、有機物は腐敗してしまいます。

これは酸素を好む微生物が増えすぎることが原因です。

好気性の微生物には「放線菌」や「糸状菌」などがあり、発酵中に発生する白いカビが糸状菌です。

「好気性菌」は、窒素を空中へ放出してしまうため植物の養分が減ります。

植物の病気を引き起こすこともあります。

嫌気性の微生物には「乳酸菌」や「酵母菌」「メタン菌」などがあり、酵素や乳酸を作ります。

「嫌気性菌」が活発に活動すると、炭化水素の一種「エチレン」が放出されます。

このエチレンによって、好気性菌や病原体の活動が抑えられます。

けれどエチレンは、植物の発芽や生育を抑制する働きのある物質です。

交互に活動するサイクルが続けば、養分の分解が進み、腐敗せずに発酵が進み、悪臭はしません。

ですから好気性菌と嫌気性菌は、バランスよく存在していることが大事です。


発酵するということは、微生物が有機物を食べてエネルギーに変えているということです。

微生物が元気に活動すると、水分や酸素を吸収し、熱を発し、発酵が進みます。

ですから水分量が少なくても多すぎても、微生物が元気を失い、発酵しません。

キッチンなど室内での堆肥作り

白い蓋つきコンポスター

家庭では「コンポスター」に「生ごみ」を入れる堆肥作りが一般的です。

室内で堆肥を作る場合は「臭い」が出ないよう「嫌気性」の微生物で発酵させます。

そのため「密閉式の容器」で空気を遮断することが大事です。

マンションのベランダや住宅地なら、臭いや虫が発生しないコンポスターが適しています。

コンポスター(composter)は「堆肥を作る容器」、コンポスト(compost)は「堆肥」の意味です。

【密閉できる容器】



市販の密閉式コンポスターは、底のほうに水分を抜くためのコックが付いています。

これは材料を入れたら完成まで容器の蓋を開けないからです。

そのため「乾燥させた材料」を集めておいて、一度に投入する必要があります。

堆肥材料を入れたら「米ぬか」などの発酵促進剤を振りかけ、蓋をします。

定期的にコックから取り出した液体は、そのまま液肥として使えます。

容器の8分目くらいまで減ってから、さらに「2週間」ほど置くと発酵が進みます。

取り出して「土」と混ぜ合わせ、「紙」などで覆い、さらに発酵させます。

季節によって期間が異なりますが、「10~30日」くらいで発酵が終わります。

少量の野菜クズなら「ジップロック」などでも代用できます。

材料を細かく刻み、発酵促進剤を入れ、空気を抜いてから密閉します。

1週間くらいしたら分解されるので、土を混ぜて発酵させます。

●電動コンポスター

電動コンポスターは「臭いが少ない」「短期間で堆肥ができる」のがメリット。

生ごみの水けを切って処理機に入れるだけなので簡単です。

容器がいっぱいになったら取り出して堆肥として使えます。

デメリットは「費用」や「電気料金」がかかることで、「音」や「振動」が出ることもあります。

材料を乾燥させるだけのコンポスターでは、発酵まではしないことに注意が必要です。

土に入れると発酵が始まり、植物を傷めてしまいます。

乾燥だけするコンポスターの場合は、密閉式容器などで発酵させる必要があります。

【臭いが出ない材料】



室内で堆肥作りをする場合は、投入する材料に注意が必要です。

動物性の堆肥は、できあがるまでに「臭い」が発生します。

落ち葉堆肥、腐葉土、バーク堆肥は、悪臭は出ませんが、「時間」がかかります。

堆肥にしやすく、臭いが少ないのは、分解しやすい「野菜くず」「落ち葉」「雑草」です。

材料が大きすぎると分解しにくく時間がかかります。

野菜くずなどは分解しやすいよう「細かく切っておく」のがコツです。

生ゴミ堆肥を作る時に入れないほうがよいものもあります。

  • 肉類(雑菌が増え、腐敗して嫌な臭いを発生します)
  • 玉ねぎやトウモロコシの皮(分解されにくい)
  • 調理済みの食品(塩分や香辛料が含まれている)
  • 野菜の種(発芽することがある)
  • 魚の骨、卵の殻、カニやエビの殻、貝殻(石灰分やカルシウム過多になりがち)

肉や塩分を入れないよう生ごみを分別してから容器に入れます。

庭やベランダなど屋外での堆肥作り

大きなカゴに入れたコンポスト材料

屋外で堆肥を作る場合なら「段ボール」や「不織布」などもコンポスターとして使えます。

地面に置くコンポスターなら、ミミズを利用した堆肥つくりもできます。

屋外用のコンポスターには、容器ごと回転させて攪拌できるものや、地面に置くだけのものがあります。

【段ボールのコンポスター】



最もコストがかからず、人気なのが段ボールコンポスト。

ただし「虫」や「臭い」が発生しやすいので、マンションのベランダには向きません。

通気性の良い「不織布」や「麻袋」などを内側に敷くと虫除けできます。

通気性をよくするために「すのこ」や「台」の上に乗せておきます。

水で濡れると段ボールが破れやすくなるので、雨が当たらない場所に置くことも大事です。

  1. 段ボール箱は「2個」を用意し、重ねて二重にする
  2. 「発酵促進剤」を「水」に混ぜておく
  3. 生ごみを加えるたびに促進剤を混ぜ、蓋をして「虫除けネット」を掛ける
  4. 箱いっぱいになったら「2週間」ごとに混ぜながら「1~2カ月」熟成させたら完成

段ボールを使う場合には「毎日こまめに混ぜる」ことが大事です。

【不織布での堆肥作り】



不織布は通気性が良いため、毎日の攪拌は必要ありません。

少量の雑草や落ち葉を入れても大丈夫です。

  1. 不織布の袋に1cmくらい「土」を入れ、「発酵促進剤」を加える
  2. 生ごみを入れ、促進剤を振りかけ、袋の口を閉めておく
  3. 袋の「8分目」くらいになったら促進剤を全体に振りかける
  4. 土を1cmくらい加え、水を少し加えて袋の口を閉め、熟成させる
  5. 夏なら「2週間」くらい、冬は「20日」くらい熟成させたら中身を出して土に混ぜる
  6. さらに「10日」くらい置いてから使う

不織布は破れやすいのがデメリット。

虫が入ることがあり、臭いが出ることもあります。

【地面に置くだけのコンポスター】



大きめのコンポスターなら沢山の堆肥を作れます。

プラスチック製が一般的ですが、陶器製などデザイン性の高いものもあります。

落ち葉や生ごみを投入する度に、全体を混ぜる必要があります。

虫、ネズミ、モグラなどが侵入しやすいのがデメリットです。

熟成期間が必要なので、コンポスターを二つ用意しておくと交互に使えます。

  1. 地面を深さ「10~20cm」くらい、コンポスターが入る大きさに掘る
  2. 穴の底に「小石」を敷き詰め、「虫除けネット」を敷いてコンポスターを設置する
  3. 上から「土」や「腐葉土」を入れてから、落ち葉や生ごみを投入していく
  4. 「発酵促進剤」や「土」を加えて混ぜ、「8分目」くらいになったら熟成させる

夏なら「1カ月」くらい、冬は「数か月」ほど熟成すると使えるようになります。

【回転式コンポスター】



容器ごと回転できるコンポスターなら攪拌が楽。

発酵促進剤と生ごみを入れたらハンドルで回転させておくだけで済みます。

充分な量になったら取り出して土と混ぜ、3~6カ月くらい熟成させます。

組み立て式で大きいため「場所を取る」のがデメリットです。

容量が大きいと、回転させるのにも力が要ります。

雨が入ると腐敗しやすいので、カバーを掛けるなどの工夫も必要です。

畑や広い庭での堆肥作り

地面に積んだ堆肥

畑など広いスペースなら「地面に穴を掘って埋める」だけで堆肥を作れます。

落ち葉だけなら、穴を掘らずに地面に山積みしておいても自然と堆肥になります。

「虫」や「臭い」が発生することがあるので、住宅密集地の庭には不向きです。

庭で堆肥を作る場合に最適なのが「落ち葉」や「雑草」です。

地面に落ち葉を放置する堆肥作りには「広いスペース」が要ります。

落ち葉が「熟成するまで追加しない」からです。

新しい落ち葉は「別の場所」に積み重ねておく必要があります。

落ち葉も雑草も基本的には同じ作り方でできます。

  1. 堆肥の材料を「30cm」くらいの高さに積み上げ「米ぬか」など補助材料を振りかける
  2. 材料と補助材料を交互に積み上げ、踏み固める
  3. 雨除けに「シート」を掛けておく
  4. 2か月後くらいに「切り替えし」を行い「水分の調整」をする
  5. 切り返し作業を2~3回繰り返す

発酵が始まると「60℃」くらいの高温になってくるはずです。

そうしたら上下をひっくり返すようにして混ぜ、切り返しを行います。

乾いているようなら水を足し、1週間ごとに混ぜ返していると「40℃」くらいに安定してきます。

そのまま「3か月」ほど熟成させると完熟堆肥の完成です。

通常は「1~2カ月おき」に混ぜておけば「半年から1年」で堆肥になります。

発酵促進剤として「米ぬか」などを振りかけると早く堆肥にできます。

空気があると嫌気性の微生物は減り、好気性の微生物が増え、分解が進みます。

そのために有機物の上下を入れ替える「切り返し」という作業を行います。

分解している間はカビの臭いがしますが、土の匂いになったら完成です。

【落ち葉堆肥と腐葉土を作るための容器】



落ち葉堆肥や腐葉土を作る時は、底のない「枠」を使います。

枠いっぱいに落ち葉を入れて、後から積み足しはしません。

落ち葉堆肥は「高さ90cm」ほどの枠、腐葉土には「高さ30cm」ほどの枠が適しています。

両手で持てる大きさの枠を3つ用意しておくと便利です。

一段ずつ外して落ち葉を入れ替えることで「切り返し」が簡単にできます。

最初は3段に重ねて使い、容量が減ってきたら一番上の枠を外して地面に置きます。

地面に置いた枠に2段に入っている落ち葉の半分を入れます。

二段目の枠を外して落ち葉を入れた枠に重ね、残りの落ち葉を移せば上下が入れ替わります。

一段目の枠の高さまで容量が減ると、堆肥として使える状態になっているはずです。

そのまま熟成を続けると、腐葉土になります。

枠は、幅30cm×長さ90cmの板4枚を組んで、四隅に「角材」を打ち付けて固定しておきます。

90cm×90cmの枠を3つ作り、重ねると高さ90cmの枠が出来上がります。

この枠を「日当たり」と「風通し」の良い場所に設置すれば準備OKです。

【落ち葉堆肥と腐葉土の作り方】



マツやスギなどの針葉樹は樹脂が多いため発酵しにくいので、腐葉土や堆肥には不向きです。

腐葉土や落ち葉堆肥を作るには、葉が大きな「落葉広葉樹」を使います。

水分と樹脂が少なく、発酵しやすいからです。

例えば「ケヤキ」「コナラ」「ブナ」「ナラ」などの木が適しています。

広葉樹でも、葉が肉厚で艶のあるクスノキやイチョウなどは堆肥や腐葉土に向きません。

水分が多いため発酵しにくいからです。

  1. 厚み「20cm」ほど「落ち葉」を入れたら「米ぬか」を振りかける
  2. 表面に地表の「黒土」を「5cm」厚さほど敷き詰める
  3. 落ち葉、米ぬか、黒土、3層を5段ほど積み重ねたら「水」をかける
  4. 上に乗って踏みしめ、水がジュワっと染み出る程度の水分量にしておく
  5. 雨除けに「シート」を掛けて「石」などで固定しておく
  6. 「60日」ほど経ったら1回目の「切り返し」を行う
  7. 乾いていたら「水」を加え、ジメジメしていたら「土」を加える
  8. 「20日」に1回ほど切り返しを繰り返す
  9. 1回目の切り返しから「90日」ほどで活発に発酵し、さらに「50日」ほどで完成

落ち葉がボロボロになっていれば堆肥として使え、ビニール袋などで保存もできます。

さらに「2年」ほど寝かせると腐葉土になり、苗床などに使えるようになります。

黒土を乗せておくのは、土中の微生物が落ち葉を分解して発酵を早め、水分調整する効果があるからです。

【雑草堆肥の作り方】



雑草堆肥を作る時には「雑草2:土1」くらいで、土を多めにします。

リン酸分を補い、発酵を促すために、「米ぬか」などを少し加えます。

「草木灰」も一緒に混ぜるとバランス良く養分を補えます。

「チガヤ」「ヨモギ」の地下茎や、硬い枝は分解しにくいので入れません。

雑草堆肥を使う時には、1㎡の土に20~40リットルが目安。

土に混ぜ込んでも、地表に蒔いてもOKです。

【もみ殻堆肥の作り方】



「籾殻」の他に、発酵させた「野菜クズ」と「米ぬか」が必要です。

野菜くずは密閉容器に入れ、発酵済みの米ぬかを加え、空気を入れずに発酵させておきます。

  1. もみ殻を木枠の底に入れ、その上に発酵させた野菜くずを入れて混ぜる
  2. 古いカーペットなど「厚手の布」で枠を覆い、一年くらい置く
  3. 数か月ごとに「切り返し」を行い、野菜くずを加える
  4. もみ殻が濃い茶色になったら野菜くずの投入を止め、さらに1年熟成させる

臭いがなく、指でもむと崩れるくらいになれば完成です。

堆肥が完成している目安

木製コンポスターに入った完熟堆肥

完熟した堆肥を使わないと植物の根を傷めたり、病原菌が発生しやすくなります。

堆肥が完成しているかどうかの目安は3点あります。

  • 色は中まで黒く、均一になっている
  • かすかにカビの臭いがあっても腐敗臭はない
  • 握ってみると、しっとりして固まり、ほろほろ崩れるくらいの硬さ

空き瓶などに堆肥と水を入れて完熟しているかどうかを調べられます。

水を入れた容器に堆肥を少し入れてみて「沈む」ようなら熟成しています。

堆肥より多めの「水」を加えて「蓋」をし、「10日」くらい放置しても臭いがなければ完熟しています。

腐った匂いがしたり、カサカサしている場合も、まだ完成していません。

切り替えしと水分調整をしながら、さらに時間をかける必要があります。

  • 乾燥してカサカサしているようなら「水」をかけて水分を補う
  • 水分が多くベタベタしているなら「土」「枯葉」「もみ殻」など「乾いた材料」を加える

水分量は、手で強く握った時に水が滴り落ちないくらいが適量です。

堆肥作りのトラブル対処法

防虫ネット付きの蓋をした木製のコンポスター

堆肥を作っている時に発生しやすいのが「虫」「カビ」「臭い」です。

順調に発酵していれば発生しないものなので、発生しないよう対処する必要があります。

【虫対策】



予防策は「虫除けネット」を掛けておくことです。

生ごみなどを投入した後は、すぐに混ぜて覆いをしておきます。

投入前の生ごみは、できるだけ「水けを切る」ことも大事です。

虫が付いた時には「石灰」や「土」を振りかけます。

堆肥が発酵して「熱」を発するようになれば、虫は死滅します。

【カビ対策】



白いカビは発酵が順調なしるしなので気にする必要ありません。

黒カビや青カビが発生した場合には「石灰」や「土」を掛けて混ぜておきます。

悪臭がある場合には、カビの部分を取り除いて土に埋めるか、ゴミとして処分します。

【臭い対策】



「茶殻」「コーヒーかす」「もみ殻燻炭」「重曹」を加えると臭いを抑えられます。

腐敗しやすい「肉類を入れない」ことが予防策です。

バラに効果的なのが、牛糞堆肥です。

農道と堆肥

【土作り】牛糞堆肥の作り方と効果的な使い方

牛糞堆肥は「バラの寒肥」に適しています。それは牛糞堆肥に含まれる「アンモニア」はバラが好んで吸収する成分だからです。バラが休眠している冬に土を掘って混ぜておくと、ゆっくり長く効果が続きます



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