肥料成分は、植物の生育過程に応じて変える必要があります
なぜなら植物の根、葉、花、実に必要な養分が異なるからです
例えば小さな苗の時期には「根」を発達させる成分を多く使います
大きく成長するには「葉」を増やして光合成をします
とはいえ成熟期に葉ばかり茂ると「花」や「実」は育ちません
植物に必要な肥料成分とは
肥料の主な成分とは「窒素」「リン酸」「カリウム」です
窒素は「葉」を育て、リン酸が「花」や「実」を育て、カリウムは「根」を育てます
肥料は、生育を促し、花を多く咲かせ、野菜の収量を増やすために使われます
ですから全く肥料を与えなくても、植物が生育しないわけではありません
ただ生育が遅かったり、花が少なかったり小さかったり、野菜の収量が減ったりするだけです
本来は植物に肥料を与える必要はありません
なぜなら、植物は根で地中の養分を吸収し、葉で光合成をして養分を作っているからです
そして養分が少ない土を好む植物もあります
例えばトマトなどは、肥料が少ないほうが実がよく付き、ついた実が甘くなります
ジャガイモも養分が少ない酸性度を好む植物です
むしろ肥料の与えすぎで弊害が起きることがあります
病気にかかりやすくなったり、枯れてしまうこともあるので注意が必要です
そのため肥料に含まれる成分と、その働きを知ったうえで与えることで効果が表れます
【葉を育てる窒素(N)】
窒素は主に「葉」や「茎」を成長させ、葉の働きや植物全体の成長に関わります
植物の「葉緑素」「タンパク質」「ホルモン」「酵素」の成分となるのが窒素だからです
例えば緑の葉に含まれる「葉緑素」は「光合成」を行う植物に特有の要素です
光合成よって、植物は空気中の「二酸化炭素」と「水」だけで「炭水化物」を作り出すことができます
そして太陽など「光」のエネルギーを受けて光合成を行っているのが、葉に含まれる葉緑素です
そのため窒素は「苗を大きく育てる時期」に必要な成分です
窒素が足りないと葉が貧弱になります
逆に多すぎると、枝葉が徒長してヒョロヒョロに伸び、植物の勢いが弱くなります
とはいえ花や実が育つ時期には、窒素を控えめにしないと葉ばかり茂って花芽が育ちません
【花や実を育てるリン酸(P)】
花芽がついて実が大きくなり出す時期になると「リン酸」を多く必要とします
不足すると、花が付かなかったり、開花時期が遅れたり、実がなりにくくなります
リン酸は、植物の「細胞膜」「遺伝子」「エネルギー代謝」「細胞分裂」に関わる成分です
例えば子孫を残す花や実を作るために「遺伝子」を形成し「細胞分裂」する必要があります
リン酸は主に花や実を育てるために使われますが、「枝」「葉」「根」の成長にも必要です
【根を育てるカリウム(K)】
カリウムは植物全体に作用し、光合成を盛んにさせる成分です
特に「根の発達」に必要な成分で、「成長が活発な部分」に働きます
まず病害虫に対する抵抗力をつけ、開花や実付きを促します
そのため苗が根を張る時期、葉を増やす時期、花や実を育てる時期、全ての成長期に必要です
逆に休眠中の冬は、それほど必要としません
【植物の細胞壁を作るカルシウム(Ca)】
カルシウムは植物の「細胞壁」を作る成分です
この細胞壁が植物にとっての骨格となります
ミネラル分のカルシウムは、土壌をアルカリ性にする成分です
例えば石灰の成分がカルシウムで、アルカリ土壌に多く含まれています
石灰質の土壌で育った植物は、カルシウムを多く必要とする性質です
カルシウムには、有機物と結びついて有害物質を無害化する働きがあります
【葉緑素の成分となるマグネシウム(Mg)】
マグネシウムは「葉緑素」となる成分で、足りないと生育が悪くなります
カルシウムが多すぎるとマグネシウムの吸収が阻害されます
そのため「カルシウム2:マグネシウム1」のバランスで与える必要があります
逆に「リン酸」はカルシウムの吸収を促します
ですからリン酸を含む肥料と石灰を同時に与えると、カルシウムが過剰になります
マグネシウム不足や窒素によってカルシウム過多になると、茎や葉が硬くなってしまいます
苦土に多く含まれるのがマグネシウムです
ですから土の酸性度を調整する場合には、苦土と石灰を合わせた「苦土石灰」が適しています
苦土石灰なら、土の酸性度を中和すると共に、マグネシウムを補給できます
肥料の三大成分「窒素」「リン酸」「カリウム」は最も大事な植物の養分です
次の二大成分「カルシウム」と「マグネシウム」は植物によって必要量が異なります
さらに植物は様々な微量成分も利用しています
それが「亜鉛」「硫黄」「鉄」「銅」「ホウ素」「マンガン」「モリブデン」などです
これら様々な成分をバランスよく配合されたものが肥料として市販されています
肥料の種類
肥料の種類を大別すると「有機肥料」「化成肥料」「配合肥料」の3種類です
それぞれ「液体」と「固体」があります
即効性のあるのが液体肥料で、ゆっくり長く効果が続くのが固形肥料です
【有機肥料】
有機肥料とは「動植物」を原料とした肥料です
ゆっくり効果が表れるため、元肥として使うのに適しています
例えばナタネの「油粕」「骨粉」「鶏糞」「牛糞」「腐葉土」「堆肥」など
有機肥料は土中の微生物のエサともなり、活動を活性化します
【化成肥料】
化成肥料とは「鉱物」を原料にした肥料です
成分が安定しており、バランスが取れています
化成肥料は微生物のエサにはなりません
有機肥料と化成肥料をバランスよく混ぜた肥料が「配合肥料」で、両方の性質を併せ持っています
肥料を与える時期と与える成分
肥料は、与える時期と成分が非常に大事です
即効性のある液肥、緩効性の固形肥料、それぞれ目的が違うからです
含まれる成分も適切な時期に与えなければ逆効果になってしまいます
【肥料を与える時期】
植物が養分を必要とするのは、次の4つの時期です
- 「種」が芽を出して根を伸ばす時期
- 植え付けたばかりの小さな「苗」が成長する時期
- 葉を茂らせて光合成をする「春から秋」の成長時期
- 「花」を咲かせて「果実」を実らせる時期
特に花や実が付く時期には、多くの養分を必要とします
土に肥料を加える際には、時期に応じて肥料の「成分」を変えることがコツです
- 根を育てたい時期:カリウム
- 葉を育てたい時期:窒素
- 花を咲かせたい時期:リン酸
- 実をならせたい時期:リン酸
例えば苗木を植え付けたばかりの時期は、大きく育つことが最優先です
そのため根を育てる「カリウム」と、枝葉を伸ばす「窒素」を多めに与えます
花芽が付く時期になったら「リン酸」を多めにして、窒素は控えるのがポイントです
植物が休眠している期間には肥料を与えませんが、冬の間に加えておくのが「寒肥」です
ゆっくり土の中に溶け出す「有機肥料」を与えておくと、春の成長を促します
【即効性のある液肥を与える時期】
液体肥料は主に「花が咲いた後」「果実を収穫した後」に与えます
養分を使い果たしている時期なので、早く回復させることが目的です
窒素、リン酸、カリウムのバランスが取れた液肥を、水やりのときに混ぜて与えます
液体肥料は数日で効果が表れ、1週間くらいで効果が薄れてきます
そして1カ月後には、ほとんど効果はなくなります
鉢植えでも地植えでも、花後や収穫後の1週間おきに数回ほど与えておけば充分です
●追肥とは
追肥は「枝葉の成長」と「花や実の成熟」を助けるための肥料です
成長中の植物に養分を補給するため「花が咲く時期」や「収穫後」に与えます
根の発達を促す「カリウム」を含む肥料を使うと、土の中から養分や水分を吸収できるになります
●お礼肥えとは
お礼肥えとは「花が咲いた後」「果実が実った後」など養分を使い果たした時に与える肥料です
勢いが弱っている植物の枝葉を増やし、勢いを回復させるために「窒素」を含む肥料を与えます
【緩効性の肥料を与える時期】
固形や粒状になった緩効性の肥料は「植え付けする時」の「元肥」として使います
徐々に溶けだして、1週間ほど経ってから効果が表れる肥料です
土の上に置いておくだけで、水やりのときに少しずつ溶けだします
●元肥(もとごえ)とは
元肥は、種や苗を「植え付けする前」に土に混ぜておく肥料です
植物の休眠中に与える元肥は、春先に芽が出る時の養分となります
元肥は生育期間中ずっと使われる肥料で、特に春からの成長を促す養分です
枝、葉、花、地上部の成分となる「窒素」「リン酸」を多めにします
油粕、鶏糞、牛糞、骨粉といった肥料です
苗を植え付けする時には、肥料が根に直接触れないようにします
肥料は、与えすぎると逆効果なので注意が必要です
全く肥料を与えなくても、生育しないというわけではありません
花が少なくなったり、小さくなったり、野菜の収量が減るだけなら、枯らすよりはマシです
過保護に育ててしまうと、ちょっと肥料や水やりを忘れただけで枯れてしまいます
専業農家でない限り、植物にかかりきりになってはいられません
最初だけセッセと世話をして、途中から放置するのが最も植物にとっては過酷です
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肥料を与えるのは、鉢植えで育てている場合だけ
地植えしている植物なら、自然に任せる栽培方法が人にも植物にも良いと考えています
家庭菜園を自然栽培にすると、作業がグッと楽になります。自然栽培は、毎年のように土を耕さず、自然に委ねる育て方だからです。肥料や薬剤を使わないので、施肥や散布の作業が要りません。
自然栽培を行う上で最も重要なのが「土作り」です
土壌改良に適しているのは「秋」。植物が成長し始める春までに微生物が増え、自然と土質を変えていくからです。宿根草も休眠中なので土を掘り返しても大きなダメージをあたえません。
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