家庭で果樹を育てる場合は、鉢植えのほうが良いことがあります。
管理しやすく、簡単に置き場所を変えられるからです。
冬は室内に置けるので、南国果樹でも栽培できます。
小さく育てて果実を減らすと、甘味が増すこともメリットです。
たわわに実っても家庭では食べきれません。
大きくなってしまうと果実の収穫が大変です。
放置すると虫やカラスが集まってきたり、落下して庭や通路が汚れたりもします。
鉢植え向きの果樹

鉢植え向きなのは「1本だけでも実がなる果樹」です。
ブドウ、柿、イチジク、西洋ナシ、プルーン、梅、ブラックベリー、ラズベリー、温州みかん、レモン、キンカン、ライム、桃、アルプス乙女リンゴ
2本以上の苗を植えないと実がならない果樹は場所を取ります。
例えば「雄木」と「雌木」があるギンナンやキウイフルーツです。
「受粉しにくい果樹」も2本以上を植えて人工授粉する必要があります。
ブルーベリー、日本ナシ、白桃、栗、リンゴ、豊後ウメ、南高ウメ、白加賀ウメ、フェイジョア
●温州みかん

樹高2~3m
ミカン科ミカン属
日本原産
耐寒温度-6℃
5~6月に開花し、10~11月に収穫
収穫できる時期によって「早生系」「中生系」「晩生系」の3系統があります。
柑橘類の中では、寒さに強い果樹です。
寒い地域では温かい時期に収穫できる早生系が適しています。
●レモン

樹高2~4m
ミカン科ミカン属
ヒマラヤ東部原産
耐寒温度-3℃
5~10月に開花して10~3月に収穫
柑橘類の中で最も「寒さに弱い」果樹で、気温が-3℃以下になる場合には室内へ入れるほうが安心です。
●きんかん

樹高1~2m
ミカン科キンカン属
中国原産
耐寒温度-5℃
7~8月に開花し、2~5月に収穫
寒さに弱いので、気温が-3℃以下になる場合には必ず室内へ入れます。
●梅

耐寒温度-15℃
2月中旬~3月上旬に開花して、6~7月に収穫
樹高5~10m
小さくして鉢植えでも育てられます。
ジメジメしない日向に置くのがコツです。
日中の気温が10℃以上の日が続くと花が咲き始めます。
花が咲いてからの気温が-3℃以下になると花が傷むので、室内で管理したほうが安全です。
●桃

耐寒温度-15℃
樹高2~8m
3〜4月に開花して、7~8月に収穫
暑さには強いほうですが
「真夏の強い日差しは避ける」ほうが生育が良くなります。
寒さには強い「ネクタリン」は暑さに弱く、涼しい気候が向いています。
●柿

耐寒温度-13℃
5月~6月に開花し、9~11月に収穫
樹高2~5m
暑さにも寒さにも強く、家庭で育てやすい果樹です。
あまり大きくなりません。
渋柿は干し柿を作ることができ、病害虫が付きにくい品種です。
●イチジク

耐寒温度-10℃
6~10月に開花して6~8月に収穫
樹高2~5m
暑さには強いけれど「寒さに弱い」果樹
温暖な地域が適しています。
●ブラックベリー

耐寒温度-20℃。
4~6月に開花し、6~8月に収穫
つる性
寒さに強い果樹
丈夫なので痩せた土でも育ちます。
●ラズベリー

耐寒温度-35℃
5~6月に開花し、6~11月に収穫
つる性
寒さに強い果樹
高温多湿の環境では病害虫が発生しやすいことに注意が必要です。
●ブドウ

耐寒温度は-20℃
5~6月に開花し、8~9月に収穫
つる性
年間の平均気温6℃以上なら育てられます。
石灰質で水はけが良い土が適しています。
ブドウは品種が多いので気候に合わせて選びやすい果樹です。
日本で育てやすいのが「デラウェア」「ナイヤガラ」「キャンベル」などアメリカ種のブドウ。
雨、寒さ、病気に強い品種だからです。



湿度が高い日本では栽培が難しいのが、ヨーロッパ種の「マスカット」。
「寒さ」と「湿気」に弱い品種です。

春から秋に雨が少なく、乾燥した気候を好みます。
ブドウは「雨」と「寒さ」に弱い果樹です。
そのため日本では梅雨時と冬の置き場所がポイントになります。
特に果実が大きなブドウは雨に弱いので「雨に当てない」ことがポイントです。
ブドウは蔓を伸ばして大きく育つので、高層マンションのベランダでは強風で倒れない工夫も必要です。
果樹苗の種類

果樹苗は主に「鉢植え苗」「素掘り苗」「ポット苗」の3種類です。
早く収穫したいなら、ある程度まで育った苗を購入する必要があります。
鉢植え苗が最も早く収穫できます。
素掘り苗やポット苗を植え替えた後1~2年ほど育ててから出荷される苗です。
病害虫に対する抵抗力も付いているので、初心者でも楽に育てられます。
まだ小さいうちに出荷されるのが「素掘り苗」や「ポット苗」。
安く購入できますが、成長に時間がかかり、若いので病害虫に弱く管理が大変です。
ポット苗は小さなプラスチックの鉢に植えられた状態で、6月ころから出荷されます。
素掘り苗とは、春に接ぎ木や挿し木をして1年目か2年目の秋に掘り上げた幼木。
根をピートモスやミズゴケなどで包んだ状態で売られています。
果樹苗の種類については、こちらの記事で詳しく解説しました

鉢植え果樹の植え付け

「鉢植え苗」なら植え替え時期まで、そのまま育てて構いません。
「素掘り苗」や「ポット苗」は、購入後すぐ「植え付け」する必要があります。
そのままでは根が乾燥し、成長できません。
根が乾燥しないよう、先に鉢の用意をしておきます。
鉢の大きさは、今の根より一回り大きいくらい。
大きすぎる鉢だと根ばかり伸びて、地上部が弱々しくなります。
【果樹苗の植え付けに最適な鉢】
どんな苗でも生育が良くなるのが「スリット鉢」です。
根が鉢の中で回らず、下向きに伸びます。
特に「柑橘類」は、根が伸びてくると鉢の中でグルグル巻いてしまいがち。
そうなると地上部がヒョロヒョロ伸びて弱々しくなります。
【植木鉢の号数】
果樹苗を植え付ける鉢は「8号」くらいが適度な大きさです。
鉢の号数は「口の部分の直径」を表しています。
1号が約3cmなので、8号鉢なら直径24cmくらい。
同じ8号鉢でも、深さのある鉢は背が高くなる果樹を植えるのに適しています。
鉢植えは、成長するにつれて「段階的に鉢を大きくする」のが丈夫に育てるコツです。
【鉢の素材】
「素焼き」や「木製」の鉢は通気性が良いけれど土が乾きやすい素材。
乾燥に弱いナシや柿には不向きです。
「プラスチック」の鉢は通気性が悪くなりがち。
ですが乾燥しにくいというメリットがあります。
乾燥しがちなベランダにも向いていて、軽いので楽に持ち運べます。
プラスチックでも、水はけが良いのがスリット鉢です。
【果樹苗の植え付け方法】
「ポット苗」の場合は、鉢から出してそのまま植え付けします。
まだ根がしっかりしていないので「土を崩さない」ように。
「素掘り苗」は「根が四方へバランスよく広がるように」してから鉢の真ん中に入れます。
鉢より飛び出る長い根は切り、バランスよく根の長さを整えます。
根の周囲に鉢の1/4くらいの隙間ができるよう「根の先端を切る」のがコツです。
両手の指や棒を突き刺して「根の間まで十分に土が入り込む」よう隙間に土を入れます。
植え付けできたら「たっぷり水やり」。
底から水が流れ出てくるまで水を与えます。
そして土が凹んでしまった部分には土を足して、さらに水やりします。
鉢植え果樹の置き場所

日当たりと風通しが良く「真夏」の西日が当たらないことが大事です。
直射日光で葉が焼けないよう、夏には日除けして日陰を作ったり、置き場所を変える必要があります。
花や実に雨がかかると収穫できなかったり、傷んだりするので、「梅雨時」には軒下や室内に入れます。
強風に当たっても傷むので、「台風時」には鉢を倒しておいたり、できれば室内に入れた方が安全です。
果樹の多くが寒さに弱いので「冬」は室内に置きます。
鉢植え果樹の剪定

果樹は病害虫が付きやすいので、剪定して「風通し」を良くしておくことが大事です。
果実を収穫するには、誘引、整姿、摘蕾と摘果も欠かせません。
- 実付きを良くする「剪定」と「誘引」
- 生育を良くする「整姿」
- 果実を美味しくする「摘蕾」と「摘果」
剪定と誘引で「樹形」を整えると、たくさんの果実が実りやすくなります。
よく日が当たるほど実がなりやすいからです。
剪定で枝を減らすことで、日当たりが良くなります。
【果樹の樹形】
果樹は「横へ伸びる枝」に花が咲き実がなるという性質があります。
そのため「枝を横へ誘引」すると実付きが良くなります。

ブドウのような蔓性果樹に向いているのが「あんどん仕立て」。
小さめの鉢でそだてられ、コンパクトになるので狭い場所でも育てられます。
冬に室内へ移動させる場合にも持ち運びが楽です。
丸い輪を付けた3~4本の支柱に蔓を巻き付けていきます。

広めの場所なら「格子状の支柱」に誘引できます。
つる性以外の果樹にも使え、多くの果実を収穫できる樹形です。
用意するものは幅60cmくらいのプランター
長さ150cmくらいの支柱を5本
支柱を縦に3本立てて、横に2本を紐で縛って固定します。
真ん中の支柱にメインとなる「幹」を縛り付け、左右に出た枝を1本ずつ横向きの支柱へ誘引します。
幹が伸びて新しい枝が出てきたら、同様にして上段の横支柱へと縛り付けます。
【果樹の花と果実の育て方】
花が咲き始めたら、蕾のうちに摘み取って数を減らします。
さらに実がついてからも生育の良いものだけ残し、水や養分を集中させると甘味が増します。
花が開いた時に人工授粉をしておくと実付きが良くなります。
●人工授粉の仕方
人工授粉は素人でも簡単にできます。
花粉が付いている花を摘み取り、他の花に花粉をこすりつけるだけ。
綿棒や筆に花粉を取り、雌しべに付けてやると確実です。
人工授粉のタイミングは二つあります。
- 花が咲いた直後から3日くらいの期間
- 風がなく天気のいい日の午前中
鉢植え果樹の植え替え

苗を植え付けてから「2年後」くらいには植え替えします。
地上部も根も伸びて、鉢が窮屈になっているからです。
植え替え時期の目安は3つあります。
- 土の表面から根が出てきた時
- 鉢の底から根が出てきた時
- 水やりしても水がしみこんでいかなくなった時
もっと大きく育てるなら、それまで植えていた鉢より一回り大きな鉢に植え替えします。
小さく育てたい場合には、根や枝葉を切ってから同じ大きさの鉢に植え直します。
樹形を整えるために錆びにくい剪定ばさみが1本あると重宝します。


庭に植える果物の木なら、耐寒温度は要チェック。
北国なら、寒さに強い「落葉果樹」が適しています。

寒さに強く、北国でも育てやすいのが落葉果樹。開花、紅葉、果実、と年間を通して楽しめます。また庭の環境づくりにも役立つのが落葉果樹です。
温暖な地域に適しているのが「常緑果樹」です。

寒さに弱いものが多い「常緑の果樹」。柑橘類やトロピカルフルーツも常緑果樹です。年間の平均気温「15~17℃」くらいが適しています。
食べたフルーツの種をまいてみるのも楽しい。
実はつかないかもしれませんが、観葉植物としては楽しめます。
果実を収穫するなら、栽培用の苗を購入するほうが確実です。

アボカドは本来とても大きくなる果樹。葉が大きく根が浅いため、剪定で小さくしたり、茂りすぎないように管理します。実が付き始めたら摘果して数を減らし、養分を集中させるのも大切です。
実を食べられない果樹でも、果実酒にすると美味しいものもあります。

秋の楽しみは木の実を使った果実酒作り。生では美味しくない木の実や、小さすぎて食べにくい木の実。果実酒にすれば美味しくなります。
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