どんな植物でも最初の「植え付け」と「植え付け後の管理」が重要です
まだ小さな苗木は、病害虫にも弱く、環境が合わなければ成長できません
よその地域から持ってきた苗木を根付かせるには、いくつか注意点があります
- 果樹苗を植え付けする「時期」
- 果樹苗を植え付ける前の「準備」
- 果樹苗を植え付けた後の「管理」
果樹の場合は「収穫」が目的なので、実付きを良くする手入れが欠かせません
果樹苗を植え付けする「時期」
果樹苗の植え付け時期は「落葉樹」と「常緑樹」で異なります。
- 落葉樹の植え付けは「晩秋」葉を落とした休眠期
- 常緑樹の植え付けは「春先」新芽が伸び出す時期
落葉樹でも、春に植え付けして、じっくり樹形を整えながら育てると生育が良くなります。
果樹苗は主に「鉢植え苗」「素掘り苗」「ポット苗」3種類が出荷されます。
まだ小さいうちに出荷されるのが「素掘り苗」や「ポット苗」。
鉢に植えつけて1~2年ほど育てて出荷されるのが「鉢植え苗」。
「素掘り苗」や「ポット苗」は、購入後すぐ「植え付け」する必要があります。
そのままでは根が乾燥し、成長できません。
果樹苗を植え付ける前の「準備」
鉢植え苗やポット苗なら、鉢から出して、そのまま植え付けすればOK
素掘り苗の場合は、根を包んでいるミズゴケなどを外して土を落とします。
この時に、根が乾燥しているようなら、水に浸けて水分を補給します。
浸けすぎると根腐れするので「10分」くらいで充分です。
素掘り苗を植え付けする前に必要なのが「根を短く切っておく」こと。
根を切ることで、細根をたくさん出させるためです。
水分や養分を吸収するのは「細い根」だけです。
注意が必要なのは柑橘類で、地表に近い「上の根は根元から切らない」ことが大事。
柑橘類は地表に近い部分の根から養分を吸収するからです。
秋に植える落葉果樹は、植え付けする時たっぷり水を与えます。
きっちり土が入って苗木が安定したら「地上50cm」くらいの高さで幹を切り詰めます。
そして乾燥や病原菌を防ぐため「切り口に木工用ボンド」を塗っておきます。
苗木の近くに「支柱」を立て、ひもで幹と縛って固定しておきます。
果樹苗を植え付けた後の「管理」
たくさんの果実を実らせるコツは「樹形」を整えること。
「よく日が当たるほど実がなりやすい」こともポイントです。
樹形を整えることで、「日当たり」や「風通し」が良くなります。
- 実付きを良くする「剪定」と「誘引」
- 生育を良くする「整姿」
- 果実を美味しくする「摘蕾」と「摘果」
「摘蕾」や「摘果」をすることで水や養分が集中して甘味が増します。
【実付きを良くする「剪定」と「誘引」】
果樹は「水平に伸びる枝に実がなる」性質があります。
ですから枝を「横へ曲げて支柱に縛り付ける」ようにして誘引します。
枝先に紐を結び、その紐の先端を地面に差した支柱に結んで枝を曲げることもできます。
落葉果樹の場合は、植え付けてから3年目までで段階的に樹形を整えるのがコツです。
落葉樹は成長が遅く、一度に多くの枝を切り落とすと大きく育ちません。
苗木を植え付けた最初の2年は「枝を少なく」して「幹を太く育てる」のがメイン。
バランスの良い樹形を作り、しっかりした木に育てることが目的です。
●植え付け1年目の夏
春に植え付けした苗は、梅雨明けまでに最初の剪定をして形を整えます。
まずはメインとなる幹を決めます。
それから前後左右のバランスが良くなるよう、残す枝を3~4本だけ選びます。
他の枝は全て付け根から切り落として構いません。
●植え付け1年目の冬
落葉果樹は、葉が落ちた頃に剪定をします。
枝をバランスよく残し、基本的な樹形を作ることが目的です。
夏の剪定で残した「枝」と「幹」の先端1/3くらいを切り落とします。
残す枝より下から出てきた新しい枝は全て根元から切り落とします。
●2年目からの誘引と剪定
2年目の夏に枝の誘引をします。
これは残した枝に花芽が付きやすくするためです。
枝が地面と平行になるくらいまで「横へ」折り曲げるのがポイント。
幹と枝の角度が90°になるくらい曲げて、支柱などに縛って固定します。
枝を横へ曲げた時、上向きに伸びている枝は根元から切り落とします。
残すのは「下向きに伸びている枝」のみです。
2年目の葉が落ちた頃には「幹」と「枝」の先端を1/3くらい切り詰めておきます。
●3年目からの剪定
3年目からの剪定では、枝を間引いて減らします。
そろそろ花芽が付き始めるので、下のほうまで日が当たり、通気性を良くするためです。
- 枯れ枝
- 交差している枝
- 並行して出ている枝の1本
- 垂直に立ち上がっている枝
こうした不要枝は付け根から切り落とします。
新しく伸びた枝は2年目と同様に横へと「誘引」します。
枝の先端部分に花芽が付くので、残した枝の先端は切りません。
樹形は、下の方の枝を長く、上にいくほど短く、「三角錐」のように。
幹からバランスよく枝が配置されるよう仕上げるのが3年目以降にする剪定の基本です。
その後は増えすぎた枝を整理する程度の整枝だけで良くなります。
錆びにくい剪定ばさみが1本あると重宝します。
【生育を良くする「整姿」】
落葉樹の剪定は、葉が落ちた冬に行うほうが果樹の負担を少なくできます。
果樹の整枝は「枝数を減らし」て「果実に水分や養分を集中させる」ことが目的です。
枝が交互に残るようにしながら、余分な枝は「付け根から」切り落とします。
枝の途中で切ると、そこから新しい枝が出てくるからです。
まずは「不要な枝は付け根から切る」のがポイントです。
多すぎる枝を切って減らすと、日当たりも良くなります。
整枝すると風通しが良くなるため、病害虫を防ぐメリットもあります。
注意点は「花芽」を切り落とさないことです。
花芽が付いている枝を切り落としてしまうと実がなりません。
果樹によって、花芽がつく位置が異なります。
●ブルーベリー、ビワ
前年に伸びた「枝の先端」か「先端から3~4節」くらいまでに花芽がつきます。
ですから「新しく伸びた枝」の「先端」を切り落とさないことが大事です。
古い枝は切り落として構いません。
●桃、スモモ、梅、ユスラウメ、アンズ、プルーン、黄桃
前年に伸びた枝に花芽と葉芽が付きます。
丸く膨らんでいるのが花芽。細いのが葉芽。
花芽と葉芽の見分けがつくくらい「芽が大きくなってから」整枝したほうが安全です。
桜桃は「短い枝」に花芽が束になって付きます。
●オリーブ、柿、柑橘類、栗、ナツメ、マンゴー
前年に伸びた枝から芽が出て、それが伸びてきた「枝の先端」に花芽が付きます。
新しく伸びた「若い芽を切らない」ようにして整枝します。
前年に実がなった枝、摘果して収穫しなかった枝には花芽がつかないので切り落として構いません。
●ブドウ、アセロラ、イチジク、ブラックベリー、ザクロ、キウイフルーツ、ストロベリーグアバ、パッションフルーツ、フェイジョア
前年に伸びた枝から芽が出て花芽と葉芽が付き、新しい枝が春に伸びて花が咲き実を付けます。
「今年になってから伸びた枝」は切り落とさないよう注意して整枝します。
●リンゴ、ナシ
2年目に伸びた枝から芽が出て「短く伸びた枝」の先端や側面に花芽と葉芽がつきます。
花が咲くと、葉芽はさらに伸びていきます。
ですから「花芽と葉芽の区別がつく」ようになってから整枝するほうが確実です。
【果実を美味しくする摘蕾と摘果】
美味しい果実を実らせるには「実を少なくする」のがコツです。
残った実に水分や養分が集中して甘味が増します。
たくさんの花が咲いて実を付けると、実が小さくなったり味が薄くなったりします。
花や実が多いと病害虫も発生しやすくなります。
さらに、多くの実を付けた果樹は、翌年の花芽が少なくなってしまいます。
ですから付き始めた蕾は摘み取って花の数を減らします。
蕾を摘み取るのは「花が咲き始めた時期」。
先に咲いた真ん中の花だけ残し、他は蕾のうちに切り取ってしまいます。
リンゴ、柿、ナシなどは蕾が房状に付くので、1房に1~2個の花だけ残します。
実り始めた果実も切り取って数を減らしていきます。
花が終わって実が付き始めたら、大きくなってきた実だけ残し、小さな実は切り取ります。
欲張らずに、少しだけ残した果実を大切に育てるのがポイントです。
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