有機肥料とは、原料に「生物由来の有機物」を使った肥料のこと
化学肥料は、原料に「鉱物などの無機物」を使い、化学的に製造した肥料です
それぞれメリットとデメリットがあります
使い方を間違えると逆効果になりかねないのが肥料です
特に肥料の与えすぎは、植物を枯らすこともあります
有機だから安全というわけではないので注意が必要です
有機肥料と化学肥料の違い
有機肥料と化学肥料の違いは「土壌改良効果」と「安定性」です。
- 有機肥料は微生物のエサとなり「土壌を改良する」効果がある
- 化学肥料は成分が明確で「安定」している
有機肥料、化学肥料、どちらにも「即効性」と「緩効性」があります。
即効性のあるのが「液体肥料」で、水やりの時に加えるだけなので使い方も簡単。
植物が疲弊している「花が咲いている時期」「咲き終わった頃」「果実を収穫した後」などに使います。
妊娠中や産後の回復期に栄養を取るのと同じです。
即効性のある肥料は数日で効果が表れ、1週間くらいで効果は薄れ、30日くらいで効果はなくなります。
産後も食べ続けると肥満になるように、植物にとっても使い続けることは良くありません。
緩効性の肥料は「固形」や「粒状」で、土の上に置いたり埋めておきます。
水やりの時に成分が溶け出して、「1週間後」くらいから効果が表れます。
徐々に効果は薄れますが「少しずつ長く」効果が続きます。
【有機肥料のメリットとデメリット】
有機肥料が少ないと、植物が病気にかかりやすくなります。
それは土の状態が悪くなって根が弱るためです。
有機物は地中の微生物を呼び寄せ、植物と共生し、病原菌を抑制します。
土を柔らかく肥沃にするのが、地中の微生物やミミズなどの土壌生物たちです。
有機肥料は、そういった土壌生物たちの養分ともなっています。
<有機肥料のメリット>
- 肥料効果が長く続く
- 土中の微生物が増え土質が良くなる
- 連作障害や病害虫が出にくい
- 微量成分も補える
<有機肥料のデメリット>
- 土の中で分解・発酵が進むため、すぐに植え付けができない
- 肥料成分が安定せずバランス調整が難しい
- 大量生産できないため価格が高め
有機肥料は、病気を抑制したり、土壌改良の効果があるので、植え付け前の土作りに役立ちます。
ただし使う材料によって成分にバラツキがあり、バランス調整の必要もあります。
微生物を増やして土質を改良する効果が高いですが、肥料効果は不安定です。
生物由来の有機物には「動物性」と「植物性」があります。
- 動物性の有機肥料:魚粉、鶏糞、牛糞、骨粉、有機石灰
- 植物性の有機肥料:油かす、米ぬか、草木灰
植物性より「動物性」の有機物のほうが多くの養分を含んでいます。
とはいえ化成肥料と比べると養分は少なく、効果が表れるまでには時間がかかります。
【化学肥料のメリットとデメリット】
化学肥料は「鉱物」や「窒素ガス」などを原料にして、化学的に合成した肥料です。
成分にムラがなく、バランスが取れています。
必要量なども明確なので、扱いが簡単です。
<化学肥料のメリット>
- 臭いなどなくて扱いが簡単
- 成分が明確なので目的に応じて使いやすい
- 微生物の影響がなく、植物に吸収されやすい
- 大量生産できるため安価
- 品質が安定している
<化学肥料のデメリット>
- 土壌改良の働きはない
- 使いすぎると植物に悪影響を及ぼす
化学肥料は扱いやすくて価格が安いのが魅力。
けれど土壌改良の効果はなく、使い続けると地力が弱くなってしまいます。
鉢植えに使うには便利ですが、庭植えには使いすぎないほうが良い肥料です。
有機肥料の種類と成分の違い
有機肥料は、種類によって含まれる成分にも違いがあります。
植物の状態に応じて「窒素」「リン酸」「カリウム」の量で選ぶと効果的です。
●有機肥料の種類と成分比率
有機肥料の種類 | 窒素(N) | リン酸(P) | カリウム(K) |
魚粉 | 7.0~8.0 | 5.0~6.0 | 1.0 |
油粕 | 5.0~7.0 | 1.0~2.0 | 1.0~2.0 |
ぼかし肥料 | 5.0 | 4.0 | 1.0 |
骨粉 | 4.0 | 17.0~20.0 | 0 |
発酵鶏糞 | 3.0~4.0 | 5.0~6.0 | 2.0~3.0 |
米ぬか | 2.0~2.6 | 4.0~6.0 | 1.0~1.2 |
有機石灰 | 0.2 | 0.1 | 0 |
草木灰 | 0 | 3.0~4.0 | 7.0~8.0 |
【魚粉】
魚粉は、イワシなどの魚を煮てから圧搾し、水分と油を抜いて乾燥させたものです。
「窒素」と「リン酸」が多く、少量のカリウムも含んでいます。
「窒素(7~8):リン酸(5~6):カリウム(1)」
窒素がタンパク質の形で含まれるため、土の中で早く分解されます。
「元肥」として使うほか「栽培期間が長い野菜」の追肥としても使えます。
元肥として使う場合には、植え付けする「2週間くらい前」に土に混ぜ込んでおきます。
有機肥料の中では「窒素の即効性が高い」ため、追肥としても使えます。
追肥として使う場合には「根が伸びる方向の先端」に穴を掘って埋め、土を戻しておきます。
リン酸が豊富に含まれる「骨粉」も一緒に使うと、過剰になりがちな窒素分を抑えられます。
微量成分も多いため「果菜類」や「葉物野菜」を美味しくします。
ほとんど含まれない「カリウム」は「草木灰」などで補います。
地表に蒔くと鳥や動物に食べられてしまうので、必ず土に埋めます。
【油粕】
油粕は、ナタネや大豆の油を搾った後のカスです。
「窒素」が多く、ぼかし肥料の材料にも使われます
少ない「リン酸」と「カリウム」は「骨粉」や「草木灰」を一緒に使うことで補えます。
「窒素(5~7):リン酸(1~2):カリウム(1~2)」
土の中にいる微生物に分解され、ゆっくり効果が表れるため「元肥」に最適。
「液肥」にしたり、「ぼかし肥料の材料」としても使えます。
土壌生物を増やし、土を団粒構造にする働きもします。
分解中に有機酸やガスが出るので植え付け「2~3週間前」に土に混ぜておきます。
地表に蒔くとコバエなどが発生するので、必ず「土の中」に埋めて使います。
【ぼかし肥】
ぼかし肥料は、米ぬか、油かす、魚粉など数種類を混ぜて発酵させたものです。
有機物を数種類ブレンドして発酵させた肥料なので、成分比率を調整できます。
ミネラルが豊富で微量成分も含むため、あらゆる植物に使えます。
「窒素(5):リン酸(4):カリウム(1)」
三大成分のバランスが良く、材料の比率を変えて自分で作ることもできます。
「即効性」も「持続性」もあり、「元肥」にも「追肥」にも使えます。
元肥として使う場合には「地表から10cmくらい」の場所に「堆肥」と一緒に入れます。
追肥として使う場合には「植物の周囲」に薄く広く撒きます。
一度にたくさん与えるのではなく、少しずつ何度かに分けて与えると効果的です。
【骨粉】
骨粉(こっぷん)は、豚やニワトリの骨に高温の蒸気と圧力をかけてから乾燥させ、粉砕したものです。
「リン酸」の量が多く、ゆっくり効果が表れます。
リン酸は、植物の根や微生物が分泌する有機酸に溶けて、根から吸収されます。
「窒素(4):リン酸(17~20):カリウム(0)」
非常にゆっくりと効果が表れ、長く持続するため「元肥」に最適です。
元肥として使う場合には、植え付けする「1カ月前」に土に混ぜ込んでおきます。
「堆肥」と混ぜて土に入れると、微生物が増え、肥料効果を早めることができます。
他の有機物と混ぜて発酵させ、ぼかし肥料にすると吸収しやすくなります
【鶏糞】
発酵鶏糞は、三大成分を含み、「即効性」があるので「追肥」に使える肥料です。
窒素・リン酸・カリウムのバランスが良く、マグネシウム・カルシウムも含みます。
リン酸を多く含むので「果菜類」の実つきを良くします。
「窒素(3~4):リン酸(5~6):カリウム(2~3)」
低価格で扱いやすく、「発酵鶏糞」「乾燥した鶏糞ペレット」「炭化鶏糞」などがあります。
発酵させていない鶏糞の場合は、植え付けの「1カ月以上前」に土に入れておきます。
土の中で発酵し、熱やガスを発生するため、植物を痛めてしまいます。
元肥として使うことが多く、植え付けの「1週間くらい前」に土に混ぜ込んでおきます。
発酵が不十分だとアンモニア臭がしますが、完全に発酵していれば追肥にも使えます。
追肥として使う場合には「根が伸びる方向の先端」に穴を掘って埋め、土を戻します。
即効性があるため使いすぎないよう注意が必要です。
【米ぬか】
米ぬかは玄米を精米する時に出る粉で、生の米ぬかは、お米屋さんや精米所で入手できます。
「リン酸」が多く、窒素とカリウムも含んでいます。
「窒素(2~2.6):リン酸(4~6):カリウム(1~1.2)」
脂肪分が多いため分解に時間がかかり、土の中で塊になって害虫や雑菌の原因となりがちです。
そのため肥料には適しませんが、ぼかし肥料や堆肥を作る時の「発酵促進剤」として使われます。
微生物が増えて発酵が早まり、悪臭も減らせます。
肥料として市販されているのは、脂分を絞った「脱脂米ぬか」です。
糖分、タンパク質も多く、ビタミンやミネラルも含み、微生物の活動を活発化させる効果があります。
元肥として使う場合には、植え付けする「2週間くらい前」に土に混ぜておきます。
水田を除草するために水面に蒔くこともあります。
保存中に虫が湧くこともありますが、効果は変わりません。
【有機石灰】
有機石灰は、牡蠣などの「貝殻」を焼いて粉砕したもので、ほとんど肥料成分を含みません。
「窒素(0.2):リン酸(0.1):カリウム(0)」
「カルシウム」など微量成分の補給、酸性土壌の「pH調整」に使います。
植え付けする「2~3週間前」に「堆肥」や「有機肥料」と一緒に土に混ぜておきます。
【草木灰】
草木灰は草や木を燃やした後の「灰」で、燃やす植物によって成分に違いが出ます。
「カリウム」が多く、リン酸と石灰も含む肥料です。
「窒素(0):リン酸(3~4):カリウム(7~8)」
「有機石灰」と一緒に使えば過剰になりがちなカリウムを抑えられます。
主に元肥として使いますが、即効性があるため追肥にも使えます。
元肥として使う場合には「油かす」や「魚粉」も加えると窒素不足を補えます。
石灰を含むため、酸性土壌のpH調整にも使えます。
微量成分も含み「果菜類」を美味しくします。
果菜類の花が咲く前に「追肥」として与えるのが効果的です。
草木灰は軽いため、風で飛ばされないよう土に混ぜておきます。
堆肥を作る時に大事なのは、有機物を十分に「発酵」させることです。完熟していない堆肥を土に混ぜると植物の根を傷めることがあるからです。
有機肥料でも化成肥料でも、施肥は案外と難しいと感じています。
頻度や分量を間違えると、全く効果がなかったり、逆効果になるからです。
肥料の与えすぎが原因と思われる病害虫や、枯らしてしまったこともあります。
きちんと管理し続けられないのであれば、自然に委ねるほうが良いのではないかと思うようになりました。
それは「自然農法」「自然栽培」という方法を知ってからのことです。
自然農法や自然栽培は「農薬や肥料を使わない」「自然に委ねる」栽培方法です。どちらも自然の「生態系」を活かすという考え方が基本にあります。ですから「植物」と「動物」との共生関係や食物連鎖がポイントです。
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