【土作り】自然栽培・自然農法の基本と考え方

自然農法や自然栽培は「農薬や肥料を使わない」「自然に委ねる」栽培方法です

どちらも自然の「生態系」を活かすという考え方が基本にあります

ですから「植物」と「動物」との共生関係や食物連鎖がポイントです

  • 土壌生物を増やす土作り
  • 根を丈夫に育てる植え付け
  • 環境を活かした手入れ

ただ放置するだけでは「農法」でも「栽培」でもありません

基本的な考え方と、自然を理解したうえで、最低限の手入れは必要です

土壌生物を増やす土作り

土から出た植物の芽

化学肥料や農薬を使わないのは、土壌生物を増やすためです

ミミズなどの土壌生物が土を柔らかくし、微生物が植物の養分を作り出しています

土の中に多様な生物がいれば、病原菌や害虫ばかり増えることはありません

土壌生物が増えると、自然と植物にとって理想的な土に変わっていきます

【土壌生物の働き】



土壌生物たちは、植物の根や落ち葉を分解して土に還す働きをしています

土壌生物たちのエサとなるのが「堆肥」です

堆肥は、そのままでは植物の根が吸収できません

土壌生物に分解されて、初めて植物が吸収できる成分になります

生育環境を整え、土壌生物のバランスを維持することが堆肥を入れる目的です


土壌生物とは、土の中に棲んでいる様々な生き物たちのことです

  • 菌類(微生物)70~75%
  • バクテリア(微生物)20~25%
  • モグラ、ミミズ(土壌動物)5%以下

一般的な畑の土には、100平方メートル700gもの土壌生物が生息しているといいます

その700gの土壌生物たちに、様々な成分が含まれています

  • 炭素(70g)
  • 窒素(8g)
  • リン酸(8g)

生物の死骸も分解されて土の養分となります

【植物にとって理想的な土とは】



植物にとって理想的なのは「団粒構造」の土です

「団子」状のかたまりの中に、「粒」状のかたまりが散らばっています

粒々には水や養分が蓄えられ、団子と団子の間には根が伸びる隙間がある構造です

土を耕すと、固く締まった土がほぐれ、根の成長を妨げる大きな石を取り除けます

たっぷり空気を含ませることも土を耕す目的のひとつです

植物は根からも呼吸しています

微生物が空気中の窒素を取り込んで植物に与える働きもしています

【土を構成するもの】



土を構成するものは大きく3つで、それぞれ違った役割があります

  • 無機物(砂、シルト、粘土など)
  • 有機物(植物や微生物が分解されたもの)
  • 空気と水

これらがバランスよく混じっているのが、植物にとって理想的な土です

●砂

石や岩が風化して、粒の大きさが「0.02~2mm」くらい細かくなった無機物です

隙間が多いため「空気」を含み、「水はけ」を良くします

●シルト

砂より小さく、粘土より大きい、粒の大きさが「0.002~0.02mm」の泥がシルトです

土をかたまりにして「水」や「養分」を蓄える働きをします

●粘土

粒が「0.002mm以下」の非常に細かな土が粘土で、粘りがあり砂や有機物を「つなぐ」働きをします

石や岩が風化する途中で、水に溶けだしたケイ酸が再び固まった無機物です

鉄、マンガン、ホウ素といったミネラル分を多く含んでいます

●腐植

落ち葉や草が微生物に分解されてできた有機物です

「水分」を保持し、土の「かたまり」を作る働きをします

土の中に残っている根も、微生物に分解されて腐植となっていきます

●空気

土壌生物が呼吸するように、植物の根も呼吸しています

そのため土の中には空気があることも必要な条件

ですから空気が入る「隙間」があることも大事です

●水

粘土や腐植が多いほど保水力があり、砂は水が流れ出てしまいます

ですから粘土質の土地には「砂」を混ぜ、砂地なら「粘土」を混ぜます

さらに「堆肥」を加えるのは、水はけも、水持ちも良い土にするためです


【土に堆肥を入れる目的】



土壌改良のために使う「堆肥」は、土壌生物たちのエサとなります

堆肥には様々な微生物が集まってきて、病原菌ばかりが増えるのを防いでいます

植物は固体の有機物そのものを取り入れることはできません

微生物が有機物を食べて消化し、分解された成分が植物の養分となります

完全に分解された完熟堆肥なら、植物の根を傷めることなく安心して使えます

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堆肥は植え付けする「1カ月以上前」に土に入れて馴染ませておきます

直径20cm×深さ20cmの穴を掘り、穴の底に一握りの完熟堆肥を入れます

土を埋め戻し、少し盛り上げておきます

盛り上げておくのは、植え付ける時に位置が分かりやすくするためです

少し離れた場所にも同様にして堆肥を入れておきます

離れた場所に肥料分があることで、さらに根を伸ばそうとするからです

枯草や野菜くずなどを使って堆肥を作ることもできます

家庭で作れるコンポスト

【土作り】堆肥の作り方・材料・道具・注意点

堆肥を作る時に大事なのは、有機物を十分に「発酵」させることです。完熟していない堆肥を土に混ぜると植物の根を傷めることがあるからです。



根を丈夫に育てる植え付け

手に持った種と植え付けした苗

自然栽培では「種まき」や「植え付け」直後に水やりしません

すると植物は、水を求めて根を伸ばそうとするからです

「1週間以上」も雨が降らない時だけ水やりします

過度に水や肥料を与えないほうが、植物は強く育ちます

根が張るまでは、ゆっくり生育します

けれど、しっかり根付いた後は元気に育っていきます

植物が元気に育つには、しっかり根を張ることが大事です

【苗の植え付け方法】



ポットなどで育てた苗は、水分を充分に与えてから地面に植え付けします

植え付けする「前日」にポット苗を水に浸し、「底から」吸水させます

この時の水に「酢」と「焼酎」を混ぜておくと病気予防に役立ちます

酢は食用酢でかまいませんし「竹酢液」や「木酢液」も効果的です

竹酢液は、かゆみ止めや水虫にも効果があります

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酢と焼酎は同量を混ぜてペットボトルなどに入れておくと便利です

乾燥続きの時の水やりにも使えます

バケツ1杯の水(7リットル):酢(7ml)+焼酎(7ml)+竹酢液または木酢液(7ml)

ペットボトルのキャップ1杯が7mlということも覚えておくと便利

酢と焼酎だけ半々ずつなら、混合液を21ml(キャップ3杯)です

草丈が高くなる植物を植える場合には「支柱」を立てて麻紐などで縛っておきます

植物の根を傷つけないよう、支柱は「定植する前」に立てておきます

支柱は、風で倒れるのを防ぎ、上へ伸びやすくするためです

上に伸びると根も深く伸びます

支柱に誘引すると、葉に日光が当たりやすくなるので光合成も活発にできます

【種まきの仕方】



種は多めにまいて、一斉に発芽させてから間引きます

一斉に発芽すると互いに協力して根が深く伸びるからです

本葉が開いて競合しはじめたら、間引いて株間を広げます

根が伸びる先まで草を刈り取って地面に敷いておきます

その範囲を少しずつ広げると、草に負けずに根が伸びていきます

環境を活かした手入れ

ガーデニングツールと苗

生えてくる雑草や、周囲に集まる動物も活かす手入れ法が、肥料や農薬を不要にします

雑草の根が土を耕し、枯草が堆肥となって土を肥沃にします

害虫にとっての天敵が増えれば、薬剤を使わずに駆除できます

植物は害虫に食べられると、その虫を食べる天敵を呼び寄せる匂い物質を出します

害虫と益虫のバランスがとれていれば、少しくらい食べられても植物が枯れることはありません


【雑草の活用法】



自然栽培では雑草は引き抜かず「根を残して」刈り取ります

地中に残した草の根が土を耕す働きをするからです

草の根が伸びている土には「隙間」ができています

根は草丈と同じくらい伸びるので、深くまで土が耕された状態です

そこに野菜や花の根が伸びていきます

草も、収穫後の野菜も、全て「地上部だけ」刈り取って地面に敷いておきます

それが地表の乾燥を防ぐため、余分な水やりも不要です

地面に敷いた草は新たな雑草が生えるを抑えます

それが自然と分解されて養分になるので土が肥沃になる効果もあります

地上部の草さえ刈り取ってしまえば、水分や養分を奪われることはありません

【生態系を守る環境作り】



生態系とは、食物連鎖によって循環している動植物の共生関係です

英語で「Ecosystem(エコシステム)」と言います

  • 「草食動物」と「肉食動物」の食物連鎖
  • 「植物」と「動物」の食物連鎖
  • 「植物」と土中の「微生物」や「土壌生物」との食物連鎖

植物が太陽光を受けると、光合成をして「糖分」が作られます

その糖分は植物の根から出て、土中の微生物が吸収します

微生物は土中の有機物を分解し、それを植物が養分として吸収します

農薬や化学肥料を使っていると、土壌生物たちは生きていられません

そのため土が団粒構造になることも妨げられてしまいます

生態系のバランスが崩れると、病原菌が増える原因ともなります

すると、さらに農薬が必要になるという悪循環になってしまいます

そのため出来るだけ薬品を使わないことが大事です

庭のパトロールは小鳥・爬虫類・肉食昆虫たちにおまかせ!

【病害虫】害虫駆除を天敵に任せて薬剤は不要

庭や家庭菜園を無農薬で栽培するなら、天敵を利用すると楽。小鳥などが、セッセと虫を食べてくれます。肉食の昆虫や爬虫類も、植物を食害せず虫を食べてくれます。

手入れに使う道具

タンポポの上に置いた軍手とハサミ

自然栽培では、ほとんど電動の機械類は必要ありません

草刈りも薬剤散布も不要だからです

例えば「軍手」と「ハサミ」さえあれば、ほとんどの作業ができます

あとは必要に応じて買い足していけば充分です

キッチン用品や文房具などで代用できれば、それでも構いません

【必要な道具5選】



以下の5個があれば、ほとんどの作業は楽にできます

  • のこぎり鎌
  • ハサミ
  • 軍手
  • シャベル
  • 移植ゴテ

用途を知れば、家にあるもので代用できる場合もあるものです

●軍手

軍手は「草刈り」する時に草を手で掴むため、「手の保護」に使います

土を寄せたり、草を取ったり、軍手ひとつで多くの作業ができます

使いやすいのは「手の平がゴム」になった軍手で、力を入れる作業もスムーズです

道具を使う時も、軍手があると力が入りやすくなります

●木バサミ

枝切り用の小さなハサミは「収穫」や「剪定」をする時に使います

ステンレス製だと錆びにくくて丈夫です

紙ハサミやキッチンバサミでも代用できますが、切れ味の良いハサミを使わないと植物を傷めます

●のこぎり鎌

細かく溝が刻まれたノコギリ鎌は「地上部の草を刈り取る」時の道具

広いスペースや長く伸びた草を刈る時に、草を手でつかんで鎌で払うと楽です

研ぐ必要はありませんが、使用後は汚れを拭き取っておきます

刃が厚くて丈夫なものを選ぶと長く使えます

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狭いスペースなら、手で引き抜いたり、ハサミで切ったりすれば草刈りできます

●移植ゴテ

先端がとがった小さなスコップは「苗の植え付け」の時に穴を掘るために使います

移植ゴテは「根菜類の収穫」にも便利です

周囲の土を移植ゴテで取り除いてから引き抜くと、野菜を傷めず楽に抜き取れます

ステンレス製で、取っ手と刃が一体型だと折れずに長持ちします

小さな鉢に土を入れたり苗を植える時なら、大きめのスプーンでも代用できます

●シャベル

先端が尖った大きなスコップは「土を耕す」時に使います

大きくなった「イモ類」や「根菜類」を掘り出す時にも、あると便利です

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鉢植えだけなら移植ゴテやスプーンで十分ですが、庭の土作りや地植えには必要です

【あると便利な道具6選】



作業によっては以下の6個もあると便利です

  • 平鍬(クワ)
  • 三角ホー
  • ジョウロ
  • 熊手
  • メモリ付きバケツ
  • 砥石


シャベルや軍手で間に合う場合も多くありますが、道具を使うことで効率的に作業できます

●平鍬

先端が幅12cmくらいの小さめのクワは「地面を平らにならす」時に使います

苗を植えた後に「土を寄せる」時や、イモ類を「掘り出す」時にも使えます

植物を植えた後に「土を固める」時は背の方で叩くと楽です

柄の部分と刃先が固定されていて、抜けにくいものだと長持ちします

移植ゴテやシャベルで代用できますが、広い庭や菜園の場合には活躍します

●三角ホー

三角形の刃が直角に付いたクワは「土を寄せる」時や、生え始めの「草取り」に使えます

三角ホーを使うコツは、刃と直角の方向へ、斜めに引くことです

●ジョウロ

水やりの時に使うジョウロは「7リットル以上」の大きなものだと一度にたくさん水やりできます

水を入れる部分にネットが付いていると、ゴミなどが入りません

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ジョウロとバケツどちらかあれば水やりできます


●メモリ付きバケツ

目盛りの付いたバケツは、米ぬか、燻炭など「分量を量る」時に便利です

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掃除用のバケツやタライなどでも代用できますが、新たに買うなら「目盛付き」がおすすめです

●熊手

熊手は刈り取った草や落ち葉を「集める」ための道具です

土作りの最初には「堆肥を土の表面に混ぜる」時にも使えます

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秋に落ちる大量の枯葉を集めて腐葉土にすると、土壌改良にも効果的です

●砥石

鎌やハサミを研ぐ時に使います

切れ味の悪いハサミで枝を切ると、病原菌が入りやすくなります

常に研いであるハサミでスパっと切るのが剪定のコツです

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粗いもの、中くらいのもの、仕上げ用、3種類あると理想的です

【広い庭や菜園で活躍する道具3選】



狭い庭や鉢植えなら上記の道具だけでも充分に作業できます

ただし庭や菜園が広い場合には、さらに道具類がないと作業が大変です

以下の3つは、あると作業効率がグッと高まります

●水やり用ホース

ホースは様々なものがありますが、水が抜けると自然に縮むホースが便利です

巻き取る手間も要りません

●草刈り機

広いスペースの草刈りには、手動式が便利です

音が静かなので時間や曜日を気にせず使えます

電源や燃料も不要なので、思いついた時サッと草刈りできます

●長鎌

柄が140cmくらいある鎌は「土手や広い部分の草刈り」に使います

立ったまま作業できるので楽です

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切れ味を保つためには、常に研いでおきます


自然農法と自然栽培がよく分かる本

自然菜園や自然農法については、色んな本があります

土を耕さない「不耕起栽培」、雑草を取らない「不除草栽培」

具体的な手法の部分では、実践者による違いがあります

土作りの方法や考え方が分かりやすかったのが三浦伸章さんの本でした

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最初に自然農法を知ったのが福岡正信さんの「わら一本の革命」

雑草を抜かずに一緒に育てるという農法に最初は驚きましたが、読んでみると納得します

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いつも自然栽培の参考にしているのが竹内 孝功さんの本です



当ブログの記事を整理してアマゾンKindleの電子書籍と紙の本で出版しています

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