市販の苗は、ある程度の大きさまで育ててあるので、楽に管理できます
手のかかる発芽までの管理や間引き作業などが終わっているからです
とはいえ、まだ若い苗は、しっかり根付くまでの手入れが欠かせません
鉢に植え付ける時には細心の注意が必要です
植え付けしたら、水やりと施肥を行い、育ってきたら植え替えと剪定をします
苗の種類
どれくらい苗が成長しているかによって「植え付け方」や「植え付け時期」が異なります。
そのため苗の種類を知っておくことが大切です。
一年草や野菜は、プラスチックの小さな鉢に植えられた「ポット苗」の状態で売られています。
多年草や樹木の場合は、育てた年数によって「素掘り苗」「鉢植え苗」なども出回ります。
若い苗ほど安価ですが、多年草や樹木は成長が遅いので、花や実がつくまでに時間がかかります。
【ポット苗】
小さなプラスチック鉢に植えられた「ポット苗」は、温室で種から育てた若い苗です。
多年草のハーブやバラなどの花木などもポット苗で売られていることがあります。
これは春に温室で挿し木した最も若い苗で、6月ごろから出荷されます。
ポット苗は最も安く手に入りますが、若い苗ほど病害虫に弱いので管理も大変です。
【素掘り苗】
バラや果樹など大きくなる多年草は、根をピートモスやミズゴケなどで包んだ状態で売られています。
これが「素掘り苗」です。
春に接ぎ木や挿し木をして、1年目か2年目の秋に掘り上げます。
ポット苗よりは丈夫ですが、素掘り苗も若い苗です。
剪定や整姿をしながら数年じっくり育てる必要があります。
果樹の場合なら、植えつけてから収穫するまで数年の手入れが必要です。
2年目に掘り上げた苗でも2~3年、1年目に掘り上げた苗なら4~5年ということもあります。
【鉢植え苗】
果樹を最も早く収穫できるのが「鉢植え苗」です。
素掘り苗やポット苗を鉢に植え替えた後、1~2年ほど育ててから出荷されます。
ある程度まで育っているので最も手間がかからず、早く収穫できます。
病害虫に対する抵抗力も付いていて、初心者にも育てやすい苗です。
購入した時の鉢のまま育てられ、果樹なら購入した年から実が付きます。
丈夫な苗の見極め方
丈夫な苗は「根」が元気です。
ただし購入する時に「根」を確認できるわけではありません。
鉢植えなら「鉢底から根が出ている」ことが目安になります。
地上部の「茎が太い」「グラグラしていない」こともチェックポイントです。
果樹苗や多年草の苗なら「芽」や「幹」の状態で判断します。
チェックポイントは5つです。
- 芽と芽の間隔や節の間隔が狭く詰まっている
- 芽がふくらんでいる
- 病気や傷がない
- 幹が太くしっかりしている
- ラベルなどで品種を確認できる
購入してから、植え替えする時にも根の状態を確かめられます。
良い根の条件は3つ。
- 根が乾燥していない
- 細い根がたくさん出ている
- しっかり根が張っている
たとえ購入した苗の根が乾燥していたり貧弱だったりしても大丈夫。
「植え付け方」と「管理の仕方」で丈夫に育てることができます。
苗の植えつけ時期
苗の植え付け時期は、新芽が伸び出す「春先」が育てやすいタイミングです。
果樹や花木など「落葉樹」の場合なら、葉を落とした「晩秋」も植え付け適期です。
休眠しているためダメージを受けにくく、うまく根付かせることができます。
「柑橘類」の植え付けは特に時期が重要です。
適期は10月初旬~11月中旬の秋か、2月中旬~3月下旬の春。
理由は主に2つあります。
- 真冬に植え付けすると根付きにくい
- 真夏に植え付けすると病害虫が発生しやすい
植え付けのコツ
プラスチック鉢に入った「ポット苗」や「鉢植え苗」は、すぐ植え替えしなくてOKです。
買ってきて数日は、そのまま置いて自宅の環境に慣れさせた方が失敗しません。
新しい葉が出てきてから植え替えした方が、うまく育ちます。
ミズゴケなどで根を包んであるだけの「素掘り苗」は、購入後すぐ植え付けする必要があります。
そのままでは根が乾燥し、成長できません。
【鉢の準備】
鉢植えは、成長するにつれて「段階的に鉢を大きくする」のが丈夫に育てるコツです。
鉢が大きすぎると、根ばかり伸びて、地上部が弱々しくなってしまいます。
ですから植え付けする時には、今より「一回りだけ大きい鉢」を用意します。
鉢の号数は「口の部分の直径」を表しています。
「1号は約3cm」です。
直径6cmくらいのポットに入った苗なら、直径9cmの3号鉢に植えつけします。
果樹など大きめの素掘り苗の場合は、直径24cmくらいの8号鉢が適した大きさです。
苗を育てる時期には、鉢底に隙間が空いた「スリット鉢(根張り鉢)」が適しています。
しっかり根が張るように作られているからです。
まずは根が丈夫に育たないと、地上部分が細くヒョロヒョロしてしまいます。
根張り鉢の特徴は、鉢底の「隙間」と、内側についた「薄板」です。
根は空気を求めて鉢底の側面に空いた隙間へと伸びていきます。
鉢底に達した根の成長を止めるのが薄板です。
そのまま伸び続けると、行き場のない根が鉢の中をグルグル回ってしまい、
水分や養分が行きわたらなくなってしまいます。
鉢底にある薄板で成長が止まることで、根は外側へ向かったバランスの良い形になります。
特に「柑橘類」は勢いよく伸びた根が鉢の中で巻いてしまいがちです。
そうなると地上部がヒョロヒョロ伸びて、果実が実りません。
プラスチックでも水はけが良い点も、スリット鉢の長所です。
鉢底に小石などを敷く必要もありません。
プラスチックの鉢は土が乾きにくく、乾燥しがちなベランダに適しています。
ベランダには耐荷重があるので、軽いこともメリットです。
通気性の良い「素焼き」や「木製」の鉢は、土が乾きやすいためベランダ向きではありません。
コンクリートの照り返し、エアコンから吹き出す熱風、空気の吹き溜まりなどが起きがちです。
乾燥気味に育てた方が良いハーブ類でも、ベランダでは土がカラカラになってしまうことがあります。
【根の処理】
ポット苗は、鉢から出したまま根を崩さずに植え替えします。
ポットから出した時に土が崩れるようなら、植え替えには早すぎです。
まずは十分に根を育ててから植え替えします。
鉢底から根が出てきた時が植え替え時期です。
素掘り苗は、たくさん細根を出させるために、根を切ってから植え付けします。
水分や養分を吸収するのは「細い根」だけだからです。
まずは根を包んでいるミズゴケなどを取り外します。
もし根が乾燥しているようなら水分の補給が必要です。
バケツなどに水を入れて「10分」くらい根を浸けておきます。
浸けすぎると根腐れするので、短時間で充分です。
植え付けする鉢より飛び出る長い根は全て切ります。
根の周囲には、鉢の1/4くらいの隙間ができるよう「根の先端を切る」のがコツです。
枝葉も切って、根とバランスが取れる大きさにします。
注意が必要なのは柑橘類です。
地表に近い、上のほうの根は、根元から切らないようにします。
養分を吸収するのは、地表近くにある上の根だからです。
柑橘類は下へ伸びる根が多く、上のほうに根が少ないので、切ってしまうと生育が悪くなります。
【苗の植え付け】
一般的な鉢を使う場合は、水はけを良くするため底に「小石」を敷いてから土を入れます。
小石はネットの袋などに入れておくと、次の植え替えの時に取り出すのが簡単です。
根はり鉢を使う場合には底石は不要です。
1/3くらいまで土を入れたら、すぐ苗を植え付けられます。
背が高くなる植物は「支柱」を立てて、ひもで幹を固定しておくとグラグラしません。
素掘り苗は「根が四方へバランスよく広がるように」鉢の真ん中に入れます。
両手の指や棒を突き刺して「根の間まで十分に土が入り込む」よう土を入れることが大事です。
ポット苗は、根を崩さずに鉢の真ん中に置き、周囲に土を入れます。
土を入れ終えたら「底から水が流れ出てくるまで」たっぷり水を与えます。
土が凹んでしまった部分に土を足し、さらに水やりすれば根の間まで土が行きわたります。
植え替え後は「直射日光が当たらない場所に置く」のがポイントです。
まだ根付いていないので、まずは根を育てることを優先します。
新しい枝が伸びて「葉」が出てきたら根付いたサイン。
日当たりの良い場所へ移動させて、枝や葉を育ててやります。
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