昔の主婦は「糸紡ぎ」や「機織り」を家事として日常的に行っていました。
現在でも、趣味として糸紡ぎや機織りをする人がいます。
黙々と手を動かすだけの単純作業をしている時間は、まるで瞑想のようです。
戦後28年もジャングルで生活していた横井庄一さんは、植物で洋服を作っていました。
戦時中は陸軍兵でしたが、戦前は洋服の仕立て職人だったそうです。
ジャングルの植物から糸を作り、木の枝で作った機織りで布を織ったといいます。
そんな原始的な道具だけでも作れるのが糸や布です。
植物から糸と布を作る方法

ラミーの原料となる「苧麻(からむし)」の茎から糸を作る方法が本に紹介されていました。
植物の「茎」や「葉脈」から繊維を取り出して糸にします。
原料の植物が違っても、植物から繊維を取り出して糸にする工程は、ほぼ同じです。
- 刈り取った茎を細かく裂く
- 裂いた茎を1本ずつ撚って繋げる
- 湿り気を与えながら紡錘に巻き付けていく
- 乾燥させて撚りを安定させる
茎は、先端の方が細く、根元に近い部分ほど太くなっています。
それをブラシなどを使って細かく裂いていきます。
細かく裂くほど細い糸になり、柔らかな布に織ることができます。
糸を撚り合わせて繋げた部分は、節になって太くなってしまいます。
1本の茎が長いほど撚る部分が少なく、節が減り、薄い生地にできます。
糸紡ぎとは、繊維をねじることで細い糸にしていくことです。
コマのようにクルクル回して繊維をねじり、糸にしていく道具が「スピンドル」です。

工業化以前のアメリカでは家庭の主婦が糸を紡いでいました。糸紡ぎは、小さく軽い道具で、空き時間にできる単純作業です。
できた糸を「織る」と布になり、「編む」とニットやロープになります。

機織りは、やり方を知ると非常にシンプル。額縁のような四角い「枠」だけでも布が織れ、自作もできそうなほど単純な作りです。現在でも、シンプルな木枠の機織り機は市販されています。
機織りより簡単にできるのが編み物です。
手軽に始められる編み物

糸を織るには「機織り機」が必要ですが、編み物に必要なのは「編み針」だけ。
糸さえあれば手軽に始められ、道具が小さいので隙間時間に作業できます。
形ができたら、剥ぎ合わせるだけで洋服が作れるので機織りより簡単です。
福島県の昭和村では、カラムシ糸を編んで「帽子」を作っているといいます。
製品化されて道の駅などで販売されますが、すぐ売り切れるほど人気の商品です。
帽子を編むくらいの糸なら「畳1枚」くらいの畑で育てたカラムシで足りるといいます。
コースター、ランチョンマット、ラグといったインテリア雑貨も作れそうです。
リネンの柔らかな糸なら、サマーセーターや靴下など衣類を編むことができます。
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糸作りのワークショップ

東北を中心に、日本全国で麻の繊維から糸や布を織るワークショップが開かれています。
これらの地域はカラムシの産地でもあるので、博物館や資料館もあります。
●「天童市西沼田遺跡公園」は山形県にあります。
カラムシを使ったアンギン編みや機織り体験を行っています。
そのほかにも、バスケット作り、勾玉づくり、数珠玉クラフトができます。
●「青苧復活夢見隊」も山形県で主催している団体です。
青苧を畑で栽培して糸を作ったり、青苧の料理を食べる体験ができます。
●「からむし工芸博物館」は福島県の昭和村にある施設。
織姫交流会という体験ワークショップが行われています。
会津地方では今もカラムシを栽培して機織りをしている人がいます。
伝統工芸の技術を知る人たちが高齢化し、減ってしまっているのが現状だそうです。
●「弥生織りの会」は滋賀県で活動している団体。
弥生時代の食と織りの文化を紹介し、体験学習などが行われています。
糸作りに使える植物

麻布の原料になる「亜麻」と、木綿の原料になる「綿花」。
どちらも庭で育てられる植物です。
亜麻は花が綺麗なので、庭に植えて観賞用としても楽しめます。
種まきに適した時期は「3~5月」と「9~10月」くらい。
草丈が1mくらいになり、夏にブルーの花が咲きます。
亜麻は寒さに強いですが、暑さや湿気には弱い植物です。
日本では北海道のみが栽培適地と言われます。
綿花は草丈60~70cmで、6~11月に花が咲き、綿が採れます。
暑さには強いですが、寒さに弱い植物です。
北国なら亜麻、関東から南なら綿花が育てやすいはずです。
花としても楽しめ、糸にして小物作りなども楽しめます。
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