自然栽培や自然農法は、農薬や肥料を使わず、自然に委ねる栽培方法です
どちらも自然の生態系を活かす、という考え方が基本にあります
ただ放置するだけでは「農法」でも「栽培」でもありません
基本的な考え方と自然を理解したうえで、最低限の手入れは必要です
例えば、植物と動物との共生関係や、食物連鎖です
自然栽培の植え付け方法

自然栽培では「種まき」や「植え付け」直後に、水やりをしません
なぜなら植物が、水を求めて根を伸ばそうとするからです
すると根が張るまでは、ゆっくり生育します
けれど、しっかり根が張るため、強く元気に育っていきます
とはいえ「1週間以上」も雨が降らない場合には、水やりが必要です
【土地の旬を知るための生物暦】
生物 | 平均気温 | 適した作業 |
梅の開花、鶯の初鳴き | 6~7℃ | 畑の準備 |
アブラナ科の開花、ソメイヨシノの開花 | 8~10℃ | 春夏野菜の種まき、ジャガイモの植え付け |
ソメイヨシノ満開 | 10~12℃ | 大根の種まき、鞍つき堆肥 |
ノダフジ開花、大麦の穂が出る | 15℃ | 遅霜がなければ夏野菜の直播 |
ノダフジ満開、小麦の穂が出る | 16℃ | 夏野菜の植え付け |
アジサイ開花 | 21℃ | 夏野菜の収穫開始 |
ヒグラシ、アブラゼミの初鳴き | 26℃ | 人参の種まき |
サルスベリ、ヤマハギ開花 | 25℃ | 白菜の種まき |
ススキ開花 | 24℃ | 秋冬野菜の種まき |
ヨメナ満開 | 18~20℃ | ほうれん草の遅まき限界 |
イチョウ黄葉、カエデ紅葉 | 11℃ | 秋冬野菜の収穫 |
イチョウ、カエデ落葉 | 9℃ | ほうれん草の寒締め |
四季の気温や湿度は地域ごとに異なります
平均気温も年によって変動しています
そんな時に目安にできるのが「生物暦」です
自然に適応している動植物は、敏感に気温を感じ取っています
ですから自然に育つ生物を見ると、おおよその平均気温が予想できます
生物暦にするために、庭に梅や藤などを植えてもいいですね
【苗の植え付け方法】
ポットなどで育てた苗は、まず水分を充分に与えてから地面に植え付けします
例えば植え付けする「前日」にポット苗を水に浸し、「底から」吸水させます
この時の水に「酢」と「焼酎」を混ぜておくと病気予防に役立ちます
酢は食用酢でかまいませんし「竹酢液」や「木酢液」も効果的です
竹酢液は、かゆみ止めや水虫にも効果があります
酢と焼酎は同量を混ぜてペットボトルなどに入れておくと便利です
すると乾燥続きの時の水やりにも使えます
「バケツ1杯の水(7リットル):酢(7ml)+焼酎(7ml)+竹酢液または木酢液(7ml)」
ペットボトルのキャップ1杯が7mlということも覚えておくと便利
例えば酢と焼酎だけ半々ずつなら、混合液を21ml(キャップ3杯)です
背が高くなる植物の苗は、先に「支柱」を立てておきます
支柱で上へ伸びやすくして、葉に十分な日光を当てるためです
そして上へ伸びると、根も深く伸びます
【種まきの仕方】
種は多めにまいて、一斉に発芽させてから間引きます
一斉に発芽すると互いに競争して根が深く伸びるからです
本葉が開いて競合しはじめたら、間引いて株間を広げます
そして根が伸びる先まで草を刈り取って地面に敷いておきます
その範囲を少しずつ広げると、草に負けずに根が伸びていきます
自然栽培の土作り

自然栽培で化学肥料や農薬を使わないのは、土壌生物を増やすためです
例えば、ミミズなどの土壌生物が土を柔らかくし、微生物が植物の養分を作り出しています
そして土の中に多様な生物がいれば、病原菌や害虫ばかり増えることはありません
土壌生物が増えると、自然と植物にとって理想的な土に変わっていきます
【自然栽培における土壌生物】
土壌生物たちは、植物の根や落ち葉を分解して土に還す働きをしています
そして土壌生物たちのエサとなるのが「堆肥」です
堆肥は、そのままでは植物の根が吸収できません
土壌生物に分解されて、初めて植物が吸収できる成分になります
そのため生育環境を整え、土壌生物のバランスを維持することが堆肥を入れる目的です
土壌生物とは、土の中に棲んでいる様々な生き物たちのことです
- 菌類(微生物)70~75%
- バクテリア(微生物)20~25%
- モグラ、ミミズ(土壌動物)5%以下
一般的な畑の土には、100平方メートルあたり700gもの土壌生物が生息しているといいます
その700gの土壌生物たちに、様々な成分が含まれています
- 炭素(70g)
- 窒素(8g)
- リン酸(8g)
さらには生物の死骸も分解されて土の養分となります
そして微生物は、空気中の窒素を取り込んで植物に与える働きもしています
【植物にとって理想的な土とは】
植物にとって理想的なのは「団粒構造」の土です
つまり「団子」状のかたまりの中に、「粒」状のかたまりが散らばっています
粒々に水や養分が蓄えられ、団子と団子の間には根が伸びる隙間がある構造です
土を耕すと、固く締まった土がほぐれ、根の成長を妨げる大きな石を取り除けます
たっぷり空気を含ませることも土を耕す目的のひとつです
なぜなら植物は根からも呼吸しているからです
【土を構成するもの】
土を構成するものは大きく3つで、それぞれ違った役割があります
- 無機物(砂、シルト、粘土など)
- 有機物(植物や微生物が分解されたもの)
- 空気と水
それらがバランスよく混じっているのが、植物にとって理想的な土です
●砂
石や岩が風化して、粒の大きさが「0.02~2mm」くらい細かくなった無機物です
隙間が多いため「空気」を含み、「水はけ」を良くします
●シルト
砂より小さく、粘土より大きい、粒の大きさが「0.002~0.02mm」の泥がシルトです
土をかたまりにして「水」や「養分」を蓄える働きをします
●粘土
粒が「0.002mm以下」の非常に細かな土が粘土で、粘りがあり砂や有機物を「つなぐ」働きをします
石や岩が風化する途中で、水に溶けだしたケイ酸が再び固まった無機物です
例えば、鉄、マンガン、ホウ素といったミネラル分を多く含んでいます
●腐植
腐植は、落ち葉や草が微生物に分解されてできた有機物です
これらは「水分」を保持し、土の「かたまり」を作る働きをします
そして土の中に残っている根も、微生物に分解されて腐植となっていきます
●空気
土の中には空気があることも必要な条件です
なぜなら、土壌生物も、植物の根も、呼吸しているからです
ですから空気が入る「隙間」があることも大事です
●水
粘土や腐植が多いほど保水力があり、砂は水が流れ出てしまいます
そのため粘土質の土地には「砂」を混ぜ、砂地なら「粘土」を混ぜます
さらに「堆肥」を加えるのは、水はけも、水持ちも良い土にするためです
【自然栽培での堆肥】
完全に分解された完熟堆肥なら、植物の根を傷めることなく安心して使えます

堆肥は植え付けする「1カ月以上前」に土に入れて馴染ませておきます
まず直径20cm×深さ20cmの穴を掘り、穴の底に一握りの完熟堆肥を入れます
そして土を埋め戻し、少し盛り上げておきます
盛り上げておくのは、植え付ける時に位置が分かりやすくするためです
少し離れた場所にも同様にして堆肥を入れておきます
離れた場所に肥料分があることで、さらに根を伸ばそうとするからです
例えば枯草や野菜くずなどを使って堆肥を作ることもできます

堆肥を作る時に大事なのは、有機物を十分に「発酵」させることです。完熟していない堆肥を土に混ぜると植物の根を傷めることがあるからです。
自然栽培における雑草の役割

自然栽培では、雑草は引き抜かず「根を残して」刈り取ります
なぜなら地中に残した草の根が、土を耕す働きをするからです
草の根が伸びている土には「隙間」ができています
根は草丈と同じくらい伸びるので、深くまで土が耕された状態です
そこに野菜や花の根が伸びていきます
地上部の草さえ刈り取ってしまえば、水分や養分を奪われることはありません
刈り取った草や、収穫後に残った野菜クズなどは、全て地面に敷いておきます
そうすると地表の乾燥を防ぎ、新たに生えてくる雑草を抑えます
そして自然と分解された草が、土の養分となっていきます
害虫駆除も生態系にゆだねると、薬剤は不要です

庭や家庭菜園を無農薬で栽培するなら、天敵を利用すると楽。小鳥などが、セッセと虫を食べてくれます。肉食の昆虫や爬虫類も、植物を食害せず虫を食べてくれます。
自然農法と自然栽培がよく分かる本
自然菜園や自然農法については、色んな本があります
土を耕さない「不耕起栽培」、雑草を取らない「不除草栽培」
具体的な手法の部分では、実践者による違いがあります
土作りの方法や考え方が分かりやすかったのが三浦伸章さんの本でした
最初に自然農法を知ったのが福岡正信さんの「わら一本の革命」
雑草を抜かずに一緒に育てるという農法に最初は驚きましたが、読んでみると納得します
いつも自然栽培の参考にしているのが竹内 孝功さんの本です
当ブログの記事を整理してアマゾンKindleの電子書籍と紙の本で出版しています
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