麻は原料の植物によって「リネン」「ラミー」「ヘンプ」と大別されます
- リネンの原料は「亜麻(フラックス)」(アマ科)東欧原産
- ラミーの原料は「苧麻(チョマ、カラムシ)」(イラクサ科)中近東原産
- ヘンプの原料は「大麻(アサ、タイマ)」(クワ科)中央アジア原産
分類上の「科」も「原産地」も異なる全く別の植物です
そのため繊維の太さも異なり、布に織った時の風合いも違います
ランジェリーに使われたリネン
Linen(リネン)は英語。
フランス語では「Lin(リン)」。
それがLingerie(ランジェリー)の語源です。
昔は女性用ランジェリーに使われていました。
ほっそりした亜麻(フラックス)の茎から採った繊維で織った布は、それほど柔らかな布です。
リネンには、下着や寝具に適した特徴がいくつもあります。
- 薄く柔らかい
- 水に強いので頻繁に洗える
- 洗うほど柔らかく丈夫になる
- 乾きが早い
- 日に当てると表白されて真っ白になる
清潔に保てるため、下着、寝具、タオルなどに最適な素材です。
リネンはヨーロッパで多く使われてきました。
例えば、油絵のキャンバスや、高級ホテルのテーブルクロスなどです。
寝具にも多く使われるため「ベッドリネン」という言葉にもなっています。
リネンの原料が亜麻(フラックス)。
綺麗な花が咲く一年草です。
この植物の「茎」から繊維を取ります。
原産地は中東です。
湿度が低い気候でなければ育たないため、日本では北海道のみが適地です。
戦前は北海道で亜麻を栽培していました。
繊維製品を作っていたのが、帝国繊維(テイセン)という会社です。
戦後は、繊維工場がテイセンボウルというボウリング場になっていました。
昨今は「亜麻仁油」「リネンシード」といった食用に栽培されることが多くなりました。
「フレンチ・リネン」「ベルギー・リネン」「アイリッシュ・リネン」は高級品です。
アイリッシュ・リネンを有名にしたのがアメリカだと言われます。
アイルランド系の移民が多いアメリカ人で大量に販売され、世界中に広まりました。
最近では、リトアニアなど東欧で生産されたリネンが日本にも入ってきています。
「Cadeau 屋 リネンのお店 かどや」さんで販売しているのが東欧産のリネンです。
生地に使っている糸の「番目」「密度」「重さ」が明記されています。
麻紐と高級着物に使われる2種類のラミー
イラクサ科の「苧麻(チョマ)」を使って織られた生地が「ラミー」です。
苧麻(ちょま)は繊維植物として日本各地で栽培され、「からむし」とも呼ばれます。
からむしにはいくつかの品種があります。
- 「麻袋」や「麻ひも」に使われる、太く丈夫な麻素材になる「ノカラムシ」
- 「高級着物」に使われるような、薄く柔らかな生地に織られる「アオカラムシ」
葉の裏側に毛が生えて白っぽく見えるのが「ノカラムシ(ナンバンカラムシ)」です。
熱帯地方で育つため日本では沖縄にあります。
ノカラムシの繊維で作った布はざっくりした風合いで、普段着の着物にも使われました。
葉の裏側が緑色のものは「アオカラムシ」です。
福島や新潟などで栽培されていたものが野生化しています。
アオカラムシの繊維は細く節がないため、柔らかな布になり、高級な着物に使われました。
苧麻は、東北から沖縄までの地域で栽培されています。
そして原料を購入して生地を生産しているのは、繊維産業が盛んな京都などの関西です。
武士の裃に使われたアサ
日本の本州以南に自生していたのが、クワ科の「大麻(タイマ)」です。
神社の「しめ縄」「衣類」「袋」など広く使われてきました。
武士の裃などにも使われたパリッとした麻素材です。
麻薬取締法の対象である大麻と区別するため、麻とかアサと表記されるようになりました。
品種改良された麻薬成分のないものだけが、専業農家で栽培されています。
麻と綿の違い
化繊やコットンが広く使われるようになり、リネンが減った理由はいくつかあります。
- 保温性ではコットンより劣る
- 化繊のほうが安価に作れる
- 亜麻の生産が冷涼な地域に限られる
- 時間と手間がかかる
- 技術を持った生産者が少なくなった
綿も麻も共に「吸湿性」には優れています。
水分や汗を吸い取るため、タオルや衣類に適した素材です。
麻は、吸湿性があると共に「速乾性」にすぐれている点がコットンとは違います。
これは麻の繊維が空洞になっていて、非常に通気性が良いからです。
早く乾くので、洗濯物が乾きにくい梅雨時には特に適しています。
繊維の長い「茎」や「葉脈」を使う麻はハリがあり、シワになりやすい素材です。
繊維の短い「綿花」を使う綿は柔らかく、シワになりにくい生地に織ることができます。
綿は「保湿性」があり水分を保持するため温かく、柔らかな繊維です
麻は「速乾性」があり水分を保持しないため涼しく、パリッとした繊維です。
ですから麻は、コットンほどの柔らかさはありません。
リネンの良さを実感したのは、関東に住むようになってからです。
特に肌に直接触れる衣類や寝具はリネンが快適。
化繊は乾きが早くて良いですが、ベタつく肌触りが不快でした。
リネンの寝具は高価なので、生地を買って手作り。
サラサラの肌ざわりが実に快適です。
夏の夜はリネンのシーツや布団カバーが快適です。リネンは吸湿性があるだけでなく、速乾性もあります。吸い取った汗もすぐに乾くので、サラサラした肌ざわりです。
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