【麻】リネンの種類と作り方・綿との違いとは

麻は、植物から取り出した繊維を原料とした糸や布、原料となる植物の総称です

原料の植物には、主に「亜麻」「苧麻」「大麻」の3種類があります

それぞれ原産地も科も異なる別の植物です


そして糸や布にした場合も、使われる植物によって呼び名が異なります

例えば亜麻を使った「リネン」、苧麻を使った「ラミー」、大麻を使った「ヘンプ」


大麻は麻薬禁止法で取り締まりの対象となっているため、現在では「アサ」と表記されます


麻の原料となる3種の植物

丸めたリネン生地

麻の原料となる植物は、まず原産地が異なります

  • 東欧原産で「アマ科」の「亜麻(フラックス)」を使った糸や布が「リネン」
  • 中近東原産で「イラクサ科」の「苧麻(チョマ、カラムシ)」を使った糸や布が「ラミー」
  • 中央アジア原産で「クワ科」の「大麻(アサ、タイマ)」を使った糸や布が「ヘンプ」

それぞれ多くの品種があり、地域に適したものが栽培されるようになって、世界中に広まりました


日本にはクワ科の大麻が自生しており、様々な用途に使われてきました

そして最初に伝来した苧麻、後に伝わった亜麻も栽培されるようになります


【日本に自生していたヘンプ麻】

しめ縄と麻布

日本の本州以南には、クワ科のヘンプ麻が自生していました


しめ縄などに使われた太く丈夫な植物で、もともとは大麻(タイマ)と呼ばれた植物です

麻薬取締法の対象である大麻と区別するため、現在は麻とかアサと表記されています

そして品種改良された麻薬成分のないものが、届け出をして許可を受けた農家のみ、栽培できます


神社で神主が、お祓いする時に振っていたのが麻です


ヘンプ麻で作った布は、硬く、パリッとしています

例えば、武士が正装として身に着けていた「裃(かみしも)」のような素材です

他にも、重たい荷物を入れるための「袋」として重宝しました


住居にも使われ、編んで「ゴザ」などにしたり、壁材に混ぜて麻漆喰にしたりします

通気性が良く、よく乾燥し、調湿性があるため、湿度が高い日本に適した素材です


【古代日本に伝来したラミー麻】

麻布の上に置いた麻袋と麻紐

イラクサ科の「苧麻(チョマ)」は、原産地の中近東からアジア大陸へと広まりました

そこから日本へも伝わり、縄文時代の遺跡からも発見されているといいます

日本では「カラムシ」とも呼ばれ、繊維植物として栽培されてきた植物です


そのカラムシにも、いくつかの品種があります

例えば、代表的なものが「ノカラムシ」と「アオカラムシ」です


熱帯地方でも育つのがノカラムシで、「ナンバンカラムシ」とも呼ばれます

葉の裏側に毛が生えて白っぽく見え、沖縄で栽培されてきたる品種です

太くて丈夫なため「麻袋」や「麻ひも」に使われ、ざっくりした風合いのため普段着の着物になります


それに対して、葉の裏側に毛がなく緑色の品種がアオカラムシです

節がなく、繊維が細いため、薄く柔らかな生地になり、高級着物に使われます

アオカラムシは主に東北地方で栽培され、繊維産業が盛んな関西で製品化されてきました


【明治時代に日本に導入されたリネン麻】

リネン生地

日本にリネンが導入されたのは、明治時代にロシアから北海道へと伝わったのが最初です


戦時中のリネンは、船の帆などにも使われる軍需品でした

そのため北海道でリネン製品を作っていた帝国繊維(テイセン)という会社が大きくなった時代です


化繊や綿の普及により、麻の需要と供給が急速に減ったため、帝国繊維も衰退してしまいました

70年代のボウリングブームの頃には、繊維工場がテイセンボウルというボウリング場でした

昨今では「亜麻仁油」「リネンシード」といった食用に栽培されています


亜麻は湿度が低い気候でなければ育たないため、日本では北海道のみが適地と言われます

吸湿性、速乾性がある麻は、夏の衣類や寝具にピッタリの素材です

真っ白なリネンに包まれて眠る夏の幸せ♪

掛布団カバー~ファスナーなしの簡単な作り方

夏の夜はリネンのシーツや布団カバーが快適です。リネンは吸湿性があるだけでなく、速乾性もあります。吸い取った汗もすぐに乾くので、サラサラした肌ざわりです。


リネンとは

亜麻 フラックス 花

リネンとは本来「亜麻」から採った繊維を使った糸や布のことです

linen とは英語での呼び方で、フランス語では「Lin(リン)」


それがLingerie(ランジェリー)の語源になりました

昔は女性用ランジェリーに使われていたほど柔らかな布に織ることができたからです

それは、ほっそりした亜麻(フラックス)の茎から採った繊維ならではと言えます


寝具にも多く使われるため「ベッドリネン」という言葉にもなっています


高級ホテルのテーブルクロスは、今でもリネンが使われます

一般家庭では、キッチンクロスなどに使われています


リネンには、下着、寝具、食卓などに適した特徴がいくつもあります

  • 薄く柔らかいため肌触りが良い
  • 水に強いので頻繁に洗え、洗うほど柔らかく丈夫になる
  • 乾きが早く、日に当てると表白されて真っ白になる

リネンの衣類を身に着けると、皮膚病にかかりにくく、ハンセン病も改善したといいます

あるいは油絵のキャンバスに使われていたのもリネンでした

ガーデニングと機織り 植物から作る 衣類と雑貨

麻の植物から繊維を採って糸にし布に織る方法

麻は、植物の「葉」や「茎」から繊維を採り出して糸にし、布に織ったものの総称です。使われる原料によって「リネン」「ラミー」「ヘンプ」の3種類に分けられます。そして原料の「亜麻」「苧麻」「大麻」は、科の異なる別の植物です。そのため繊維の太さも異なり、布に織った時の風合いも違います。


リネンの種類とは

亜麻と麻糸

リネンの原料である亜麻は、200種もあるといわれます

亜麻は、まず繊維用と採油用に分けられます


繊維用の亜麻は、草丈が高く、枝分かれの少ない品種です

一方で草丈が低く、枝分かれの多い品種は、採油用として南の地域で栽培されます

油を採るため、種が多く取れるよう密に植えます


亜麻は原産地の東欧からヨーロッパ各地へ広がり、紀元前の古代エジプトでリネンへと発展しました

例えばエジプトのミイラを包んでいるのがリネンの布です


現在ロシアが最も多くの亜麻を生産しており、2位がフランスです

そして3位のベルギー、オランダと続きます

アイルランドのリネンを有名にしたのは、アメリカ大陸のアイルランド系移民です


【フレンチリネンとは】

フランスで亜麻の栽培、繊維産業が発展したのが1950年からといわれます

近代的な工業体制が整ったことで、リネン糸の生産、使用量ともにヨーロッパ1位です

そしてリネン生地の9割が、国内で消費されています


繊維産業での輸出量は減少傾向にあるものの、リネンだけは増加しています

ですからリネン繊維は、貿易収支が黒字を示す数少ない繊維産業です


【ベルギーリネンとは】

ベルギーは北フランスと国境が接しており、フランス同様に亜麻の栽培が盛んに行われてきました

そしてリネン繊維の取り扱い量では、ヨーロッパで最も多い国です


ところがリネン糸の使用量では、フランスに次ぐ2位となっています

なぜならフランスでは紡績業が盛んで、ベルギーの3倍もの織り糸を生産しているからです

ベルギーは亜麻を栽培して繊維を輸出し、フランスで紡績された糸を輸入しています


【アイリッシュリネンとは】

アイリッシュ・リネンを有名にしたのがアメリカです

なぜならアメリカにはアイルランド系の移民が多いためです

アイリッシュリネンは、アメリカ国内で販売されたことで、世界中に広まりました

フランスやベルギーのリネンは高級品です

それに対してアイリッシュリネンは、より身近になったといえます


最近では、リトアニアなど東欧で生産されたリネンが日本にも入ってきています

Cadeau 屋 リネンのお店 かどや」さんで販売しているのが東欧産のリネンです

生地に使っている糸の「番手」「密度」「重さ」が明記されています


リネンの番手とは

リネンドロンワーク

リネン生地の番手とは、使用している糸の太さを表したものです

そして番号が大きくなるほど、細い糸を使用しています


糸が細いほど薄い生地になりますが、生地の厚みは織り方によっても変わります


最も薄いのが「平織」と呼ばれる、縦横1本ずつの糸をシンプルに織った生地です

次に薄いのが「綾織」で、縦糸2~3本に横糸1本を織ってあります

最も厚いのが「ヘリンボーン」で、縦横2本ずつの糸をV字型などの模様に織った生地です


細い糸を密に織った生地は、薄く、柔らかな生地になります

太い糸を密に織ったものが、キャンバス地など厚手の丈夫な生地です


糸の太さに関わらず、粗く織ると透け感のある生地になります


リネンの作り方とは

麻糸

エジプトでは、ナイル川の沖積土で亜麻が栽培されていました

開花し終えたばかりの緑の茎を根元から引き抜くことで、細く染めやすい糸が得られます

種子が熟した亜麻から作られるクズ繊維は、奴隷の衣類や袋に使われたといいます


リネン、ラミー、ヘンプ、どれも同じ工程で繊維を取り出し、糸や布にします


例えば亜麻を収穫したら、まず茎の長さによって分類します

次に櫛のような道具で葉と種子を取り除き、束ねて天日干しします

それから10日ほど水に浸して木質部を取り除き、繊維を取り出します


これによって長さ60cmほどの繊維束が得られます

その繊維を撚りをかけ、糸にして、織りあげると、生地の完成です


布を織るという楽しみ♪原始的な織り機でも織れる驚き

【機織り】やり方と織り機のシンプルな仕組み

機織りは、やり方を知ると非常にシンプル。額縁のような四角い「枠」だけでも布が織れ、自作もできそうなほど単純な作りです。現在でも、シンプルな木枠の機織り機は市販されています。戦後28年もジャングルで生活していた横井庄一さんは、木の枝を組んだ枠で布を織りました。


リネンと綿の違いとは

白い布の上に置いた綿花と麻布の上に置いたヘンプシードと葉

綿も麻も共に「吸湿性」には優れています

そのため水分や汗を吸い取り、タオルや衣類に適した素材です

麻は、吸湿性があると共に「速乾性」にすぐれている点がコットンとは違います

これは麻の繊維が空洞になっていて、非常に通気性が良いからです

早く乾くので、洗濯物が乾きにくい梅雨時には特に適しています

繊維の長い「茎」や「葉脈」を使う麻はハリがあり、シワになりやすい素材です

繊維の短い「綿花」を使う綿は柔らかく、シワになりにくい生地に織ることができます

綿は「保湿性」があり水分を保持するため温かく、柔らかな繊維です

麻は「速乾性」があり水分を保持しないため涼しく、パリッとした繊維です

ですから麻は、コットンほどの柔らかさはありません


ふわふわ綿花 育てて、紡いで、布に織る 昔は皆やっていた家事

綿花を育てて糸を紡ぎコットンの布を織る方法

綿はワタという植物の実から採った毛を糸にして布に織ったもの。昔は、どこの家庭でも衣服を自分で作っていました。現在では糸紡ぎや機織りは「趣味」のひとつ。ガーデニングの延長で綿花を育て、布に織るのも面白い試みです。時間と手間はかかりますが、難しい作業ではありません。


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