かつては「こんにゃく芋」と「わら灰」を使って家庭でコンニャクが作られていたそうです
ですが現在は、こんにゃく芋も、わら灰も、都会では手に入りにくい材料
手作りするなら代替品の「精粉」と「凝固剤」を使います
こんにゃく芋そのものには毒性があり、生では食べられません
茹でてアルカリ処理することによって毒抜きされ、コンニャクになります
アルカリ処理に使われるのが、凝固剤の「消石灰」「炭酸ソーダ」「草木灰」などです
精粉で作るコンニャク
最も簡単なのが、市販の精粉で作るコンニャク。
手軽に挑戦できる手作りキットも販売されています。
精粉とはコンニャク芋を乾燥して粉にしたものです。
市販のコンニャクも、多くが精粉を原料にしています。
凝固剤として多く使われているのが水酸化カルシウム(消石灰)。
水酸化カルシウムを使うと固まりやすいですが、エグ味や臭みが強くなります。
食品添加物の「炭酸カリウム」を使うと固まりにくいですが、柔らかく仕上がります。
四角い板コンニャクを作る場合は、アルカリ度の強い「水酸化カルシウム」を使います。
炭酸カリウムでは、型に入れても形が崩れてしまいます。
精粉の量でコンニャクの硬さも調整できます。
- 糸こんにゃくは「精粉1:灰汁20~30」
- 柔らかめの板こんにゃくは「精粉1:灰汁50」
- 板こんにゃくは「精粉1:灰汁35」
精粉が多いほど硬いコンニャクになります。
普通の板こんにゃくを作る場合、精粉100gに灰汁3500g(3.5リットル)です。
灰汁は、ぬるま湯(4リットル)に炭酸カリウム(17g)を溶かして作っておきます。
- 灰汁は40℃くらいに温めておき、精粉を少しずつ入れる
- よくかき混ぜて溶かし、のり状になったら1~2時間くらいおいて落ち着かせる
- 鍋に湯を沸かしておく
- のり状のコンニャク粉をカップなどですくって湯に入れる
- 85℃くらいで50~60分ほど茹でる
- 茹で上がったら冷水に入れて冷ます
四角いコンニャクにする場合は、ステンレスの四角い容器に入れ、容器ごと茹でます。
茹で上がったら容器ごと冷水に入れ、十分に冷めてから型から出します。
寒天型を使うと出すのが楽です。
糸こんにゃくを作る場合は、絞り袋に入れて、お湯に絞り出します。
2~3ミリの口金を取り付け、内側を水で濡らしてからコンニャクの素を入れます。
80~90℃くらいに沸かした湯に絞り出し、20~30分ほど茹でます。
冷水に取って食べやすい長さに切ったら出来上がり。
こんにゃく芋から作るコンニャク
生のコンニャク芋を使う場合は、茹でてから灰汁の中にすりおろします。
作りやすいのは3~4年目に掘り上げた500~1000gくらいの芋です。
群馬県はコンニャク芋の生産地。
期間限定で、こんにゃく芋を販売しています。
こんにゃく芋は栽培に2年以上かかり、収穫時期は秋~冬だけです。
【こんにゃく芋の下準備】
- こんにゃく芋は水洗いして、泥をきれいに落とす
- 四つに切って芽の部分は取り除き、皮をむく
- 芋の重さを計り、濡れ布巾をかけておく
【灰汁を用意する】
炭酸カリウムに水を加えて溶かしておきます。
水4リットル:炭酸カリウム17g
炭酸カリウムを少なくすると柔らかいコンニャクになります。
ですが最低14gは入れないと、うまく固まりません。
こんにゃく芋1㎏:灰汁4リットル
こぶし大のコンニャクが30個くらい作れる分量です。
【こんにゃく芋をすりおろす】
ゴム手袋の上に軍手をすると作業しやすくなります。
灰汁の中におろし金を入れ、直接コンニャク芋をすりおろします。
空気中ですりおろすと、灰汁と芋が混ざりにくくなるからです。
すりおろしながら、よくかきまぜておきます。
芋の白い部分が残らないよう、全体が灰色になるまで混ぜるのがポイントです。
よく混ぜたら、そのまま1~3時間ほどおきます。
こんにゃくが固まったら、沸騰した湯に入れて茹でれば完成です。
【こんにゃく芋の栽培】
こんにゃく芋を栽培する場合には、種イモを使います。
市販のコンニャク芋を植えても栽培できません。
コンニャク芋は、親芋に付く子芋で増えます。
この子芋を春に植えて、秋に採れる芋が「2年子」です。
2年子を翌年の春に植えると、その年の秋に採れる3年子が500~700gくらいになります。
秋に掘り起こした芋を翌春に植えると、どんどん芋が大きくなります。
けれど数年すると肥大しなくなり、花を咲かせ、芋が消えます。
ですからコンニャク作りに使えるのは、2~3年目くらいに掘り出した芋です。
関東地方なら、5月上旬くらいが植え付けの適期です。
直射日光が当たらず、風通しの良い場所が、植え付けに適しています。
木や、背の高い作物の東側なら直射日光を避けられます。
植えつけ2か月くらい前に「もみ殻燻炭」や「落ち葉堆肥」などを入れておきます。
水はけのよい土に、芋の3~4個分くらい間隔をあけて植え付けします。
土は芋が完全に隠れるくらい、5~10cmほどかぶせます。
1カ月ほどで芽が出て茎が伸びてくるので、芋が露出しないよう土を寄せておきます。
土の上から「わら」などを敷いておくと乾燥を防げます。
9月下旬~10月上旬ころ葉が黄色くなったら収穫時期です。
掘り上げたら、直射日光が当たらない、風通しの良い場所に置いて乾かします。
500g以上に育った芋をコンニャク作りに使います。
300g以下の小さい芋は、翌年の春に植えるために保存しておきます。
冬に凍結しない地域であれば、土に植えたまま育てることも可能です。
保存する時は、よく乾燥させ、土が付いたまま、涼しい場所に置きます。
加工するまで水洗いはしません。
わら灰を凝固剤として使うコンニャク
稲わらが手に入り、燃やして灰にすることができれば、凝固剤として使えます。
新しい稲わらの泥などを落とし、干してよく乾燥させておきます。
稲わら700g:水6~7リットル
- 桶に竹ざるを乗せておく
- 大きな鍋に水を入れて火にかけ、沸騰する前に火からおろす
- ステンレス板に稲わらを乗せて火をつけ、短時間で黒焼きにする
- 焼いた稲わらを湯に入れ、かき混ぜないようにして浸す
- 10~20分おいてから稲わらを竹ざるに移し、桶に灰汁を溜める
- 鍋に残った液を稲わらの上から注ぎ、灰汁が全て桶に落ちるまで待つ
- 鍋は洗っておき、黒灰の乗った竹ざるを乗せて、上から灰汁を静かに注ぐ
- 灰汁の色が透明になるまで、4~5回くりかえす
- 竹ざるを洗い、木綿の布巾を敷いて、灰汁を濾す
稲わらを焼くときは、灰が白くなるまで焼かず、黒焼きにするのがポイント。
炭状になった灰が「ろ過材」となるからです。
ザルに乗せて灰汁を注ぐ時も、稲わらを押しつぶさないようにします。
灰汁ができたら、あとは炭酸カリウムを使った場合と同じです。
芋を灰の中にすりおろし、1~3時間おいてから茹でて冷ませば完成。
ただし、わら灰を使った場合は「茹で方」「丸め方」にもコツがあります。
わら灰で作ったコンニャクは固まりにくいので、1個だけ試し茹でしてみます。
カップなどで芋をすくい取り、手で転がして丸めます。
湯に入れても固まらずに浮いてくる場合は、芋を3~4時間おいてから丸めます。
時間をおいてから丸めて茹でても固まらない場合は、炭酸カリウムを加えるしかありません。
炭酸カリウム14g:ぬるま湯200ml
すりおろした芋1㎏に炭酸カリウム液を加えて混ぜ、1時間くらいおきます。
茹でる時には、沸騰した湯に入れないことがポイントです。
沸騰した湯に入れると、すぐに芋が浮いて固まりません。
お湯を85℃くらいに保ち、丸めた芋を入れ、1~2分してから静かに湯を混ぜます。
鍋の底でとどまった状態で、じっくり温めると固まってきます。
試し茹でして固まるようになれば、芋を全て丸めて茹でていきます。
芋を丸める時は、1個ずつ時間をおきます。
自然と表面がなめらかになるまで置いてから次をすくい取り、手で転がして丸めます。
最後に残った芋はカップに入れておき、表面が平らになってから丸めます。
湯に入れて15~20分くらいすると固まって浮いてくるので、中火にして30~40分茹でます。
白い泡状のアクが出てきたら、すくい取って捨てます。
透明感のあるゼリー状から乳白色に変わり、中まで固まったら完成です。
ザルですくって冷水に入れ、熱が取れると水の底に沈んできます。
水を入れ替えながら冷やすと、透明感のある柔らかいコンニャクになります。
ザルに上げ、水気を切って調理します。
かつては家庭でも作られていましたが、作り方を知る人も少なくなった現在。
その「秘伝」と「奥義」が『絶品 手づくりこんにゃく』という本に書かれています。
本物の「こんにゃく芋」と「わら灰」で作ったコンニャクは、柔らかく、淡いピンク色になるといいます。
手間も時間もかかりますし、コツをつかむまでは失敗することもあるようです。
こんにゃく作りの方法を、手づくり石鹸に応用できないかと思い、調べてみました。
手づくり石鹸で使われるアルカリが「苛性ソーダ」。苛性ソーダは薬局でしか購入できない劇薬で、廃棄するにも配慮が必要です。その点、昔ながらの「木灰」なら安心して使えます。
木灰では固まらなかったので、炭酸カリウムや稲わらの灰汁なら固まるかもしれません。