北欧で発展した暖炉がロシアで進化したのがペチカ
長く厳しいロシアの冬に適した暖房設備です
熱効率が良く、経済的で、家全体を温めることができます
細い枯れ枝も燃料として使え、少ない量の薪で済むことがメリットです
ペチカと暖炉の構造による違い
ペチカの特徴は「壁に煙突が埋め込まれている」こと
そうすることで煙突内の熱を室内にとどめることができます
ですから部屋全体や家全体が温まる構造です
壁の中に埋め込まれた長い煙突
そこには温まった空気が充満しています
その熱が壁にも伝わって温まります
温まった壁から熱が放射され、じんわり部屋全体へ温かさが広がります
暖炉の煙突は、火の真上にあります
すると熱は上昇して外へ出ていきます
そのため火の前しか温まりません
暖炉から離れるほど温かさが届かなくなります
- 暖炉は「一時的」に「一部分」を温める暖房
- ペチカは「冬中ずっと」「部屋全体」を温める暖房
この違いは「薪の燃え方」「燃焼時間」「熱効率」によるものです
【薪の燃え方による違い】
ペチカの長い煙突には「薪が燃え付きにくい」という特徴があります
それは煙突が長く閉じられているため「入り込む空気の量」が少ないからです
ペチカは火を燃やす部分が小さく、長い煙突に空気を通す必要があります
そのため火がついて温まるまでには時間がかかります
けれど着火してしまえば長く燃え続けます
そのため少ない薪でも長く燃焼できるのがペチカのメリットです
暖炉は火を燃やしている部分が開いていて、そのすぐ上に煙突があります
そのため大量の空気が入って早く着火できますが、燃え尽きるのも早くなります
ですから暖炉では頻繁に薪を足す必要があります
火が早く着くのが暖炉のメリットですが、大量の薪が必要で、部屋全体は暖まりません
【燃焼時間の違い】
「一冬ずっと燃やし続ける」ことがペチカの特徴です
ペチカの火は隠れているので、夜間や外出時も火を消す必要がありません
暖炉では炎が直に出ているので、寝る時や外出時には火を消さないと危険です
ペチカは空気の通りが悪いため着火しにくいですが、火が付いた後はずっと燃やし続けます
煙突の入り口部分で火を付けると、温まった空気がペチカの煙突内を上昇します
長い煙突の中では、中で気流ができるまでに1時間くらいかかります
けれど薪を入るだけ入れておけば9~15時間ずっと連続して燃え続けます
熱効率が良いので、長時間ずっと燃やしても使う薪の量は少なくて済みます
薪を早く燃やしたり、ゆっくり燃やしたり火加減しながら燃やし続けます
そのためペチカには空気の量を調節するための空気孔が開いています
【熱効率の違い】
ペチカは少ない薪でも長時間ずっと燃やし続けられる暖房設備
薪が燃え尽きるまでに時間がかかるので多くの薪を必要としません
細い木の枝などが使えるのもメリットです
壁に埋め込まれた煙突に熱を溜めておけるので、熱効率にも無駄がありません
室内全体が温まり、長時間ずっと使え、少ない薪で済むのがペチカ
ですから冬が長い寒冷地には最適の暖房器具と言えます
ペチカに似たロケット・ストーブ
ペチカと構造が似ているのが「ロケット・ストーブ」です
金属製の缶などに煙突を組み込んだもので、煙突の周りを断熱材で覆ってあります
煙突内で二次燃焼すると熱効率が良くなります
ロケット・ストーブは、アウトドアで使うためにアメリカで作られたものです
発展途上国での支援活動や災害時などでも使われるようになりました
灯油缶など身近な材料で簡単に作れます
この煙突部分を長くしたのがペチカの構造と言えます
煙突周りの断熱材として耐火性のあるレンガで覆い、それが壁になっています
ロケット・ストーブを自作して庭などで楽しんでいる人も増えているようです
自作ロケット・ストーブの作り方や実例が豊富に紹介されている「手作りストーブの本」
レンガの壁に組み込んだペチカのようなストーブを自作した人も紹介されています
自作ロケット・ストーブには市販されているステンレス煙突を使います
煙突の中で直接火を燃やすため、どうしても煙突が劣化してしまいます
そのため、この煙突部分は定期的な交換が必要だそうです
囲炉裏、暖炉、ペチカへと進化
電気やガスが普及するまでは「直火」が暖房や調理の手段でした
そのため昔は、世界中で一般的に使われていたのが、囲炉裏や竈(かまど)です
煙を外へ出すために「煙突」を付けたのが、北欧で進化した暖炉やストーブ
さらに煙突を「壁」に組み込んだのが、ロシアで進化したペチカ
そして煙突がない囲炉裏を使い続けたのが、日本を含めたアジア地域です
北欧やロシアのような極寒の地域と違い、日本の囲炉裏は調理が主な目的となっています
【炎を眺める癒し効果】
暖炉、ストーブ、囲炉裏の魅力のひとつに、炎を眺められる点があります
その一方でペチカは、暖房効率を最優先したため、炎を眺めることはできません
赤々と燃える火を眺めることには、大きな癒し効果があります
例えば都会のマンションでも楽しめるのが、キャンドルの灯りです
ストーブがあれば、シチューを煮たり、お湯を沸かしたりもできます
暖炉で赤々と燃える火を眺めるのも、贅沢な時間です
【贅沢な暖炉と薪ストーブ】
多くの人が暖炉や薪ストーブに憧れますが、薪は非常に高価
重労働の薪割りを続けられる人も少ないはずです
ペチカとは違い、暖炉や薪ストーブは、どんどん薪を燃やす必要があります
なぜなら煙突から熱が逃げ、大量の空気が入るため、すぐに薪が燃え尽きてしまうからです
それでいて暖炉や薪ストーブは、正面だけが温まり、部屋全体は温まりません
さらに大変なのが、煙突掃除です
特に煙突が長いペチカは、煙突掃除が大変だといいます
【見直される囲炉裏の良さ】
炎を眺められ、室内が暖まり、少ない薪で済むのが囲炉裏です
ただし囲炉裏を設置するには、排煙するための設備など家の構造を考慮する必要があります
囲炉裏とは、自作もできる暖房器具であり、調理設備です。なぜなら原型は、土間の地面に穴を掘っただけの「炉」だからです。一方で囲炉裏テーブルは、本来は「長火鉢」と呼ばれるものです。囲炉裏は、暖炉やペチカのように、家の「構造」に組み込まれたもの。火鉢や七輪のように、持ち運んだりできるものとは違います。
囲炉裏の魅力を知ったのは、大内正伸さんの本を読んでから
大内さんはイラストレーターなので、分かりやすい絵も魅力です