白糸刺繍の魅力は、糸の厚みによって現れる綺麗な陰影です
白い布に、白い糸で刺繍するので、一見すると無地のようにも見えます
ところが光が当たると刺繍が陰影となって模様を浮かび上がらせます
例えばキルトのようなブティ、レースのようなカットワークやドロンワーク
上品で高級感があり、白の清潔感が際立つ刺繍です
ブティ白糸刺繍
ブティ刺繍は、2枚の布の間に糸を詰めて縫っていく一種のキルト
例えばフランスの「ブティ刺繍」は「布の彫刻」とも呼ばれます
そして白糸刺繍の陰影を最も活かせる技法です
まずは布を重ねてラインをステッチします
そのラインの内側、2枚布の間に刺繍糸を縫いこんでいくという複雑な技巧です
カットワーク
カットワーク刺繍は、布に刺繍を差してから内側を切り取る技法
まずアウトラインをボタンホールステッチしていきます
それからライン内の布を切り取ってレース状にします
例えば、細かな模様にするほど、レース編みのような表情になります
カットワークと刺繍を組み合わせても素敵です
布目の粗いリネンなどは、ドロンワークにも向いています
ドロンワーク
ドロンワーク刺繍は、布の経糸や緯糸を部分的に抜き取って模様を描く技法
布目が粗いリネンは糸を抜きやすいため、よく使われます
カットワークよりは簡単です
とはいえ残した糸を絡ませたりする複雑な技巧もあります
連続的に穴を開けて、縁をかがっていくことで、カットワークのようにもできます
ヨーロッパ各地に独自の技法があります
- ドイツの「シュバルム刺繍」
- フランスの「アジュール刺繍」
- デンマークの「ヘデボ刺繍」
絵を描くように、模様を作り出すように刺していく手縫い刺繍
とても時間がかかるし、綺麗に仕上げるには練習して技術を習得する必要もあります
古典文学『ジェイン・エア』では、刺繍が「貴族」のたしなみだったことが描かれていました
孤児のジェインが、貴族の屋敷で家庭教師として雇われるシーン
刺繍や絵画ができると答えたために、採用担当の家政婦から認められます
階級ではなく、身に付けた技術が、その人の優雅さ、高貴さを示した時代です
仕事に直結する技術とは違った豊かさを感じさせます
白糸刺繍の実用的な用途
刺繡は装飾だけではなく、実用的な用途もあります
布を補強でき、破れや汚れを隠すことができるからです
例えば真っ白なベッドリネンや衣類にシミが付いてしまった場合
シミ抜きしても取れないなら、上から刺繍してみてはいかがでしょうか
穴が開いたジーンズはファッションのひとつですが、刺繍で修復もできます。繕うための刺繍の中でも簡単な「ダーニング」。縦横まっすぐに糸を通すだけです。穴が開いてしまった場合だけでなく、取れないシミを隠すこともできます。シンプルなトレーナーやTシャツにアクセントとして施しても可愛い。
穴が開いてしまった白いジーンズを補修しました
シンプルな線と面だけでも綺麗な模様を描けるのが刺繍の魅力
基本ステッチを覚えるだけで、色々な表現ができます
刺繍は、糸で布に絵を描くようなもの。基本ステッチだけでも様々な表現ができます。例えば、線だけで輪郭を描くような感じ。描いた輪郭の中を、塗りつぶすように糸を差せば色付けができます。初心者にも始めやすいのが「クロスステッチ」です。布目に沿って×印を連ねていくだけなのに、複雑な表現もできます。
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