DIYで小屋を自作する前に建築法にも注意すべき

小屋を作る時には、事前に知っておくべきことがあります

失敗したからと言って簡単に修正がきかないからです

例えば「法律的な制限」「建築に関する基礎知識」には注意が必要

小さくとも建築物なので、建築基準法の対象となることがあります

お金と時間をかけて作ったのに、後から移築や撤去を指示されてはガッカリ

安全な建物を作るためにも、基礎的な知識は持っておきたいものです

小屋を自作する前に知るべき建築に関する「法律」

木造建築の模型

小屋を作る前に確認しておくべき「法律」は3つあります。

  • 土地の使い方を定めている「農地法」
  • 建てていい建築を定めている「都市計画法」
  • 建物の安全性を確保するための「建築基準法」



作ってしまってから、法的に認められないため移築や解体を指示されては大変です。

【農地法】土地の使い方が決められている



小屋を建てようとしている土地が「農地」の場合。

まず「転用許可申請」を提出する必要があります。

土地の使い方が、「農地法」では農地のみに限定されているからです。

田舎の安い土地を購入して小屋を建てる場合などに、注意が必要です。

農地とは、作物を作って生計を立てるための土地で、それ以外の用途には使えません。

建物を建てることも、車を置くことすら禁じられています。

ですから休耕地を駐車場に転用する場合にも、転用許可申請が必要になります。


転用許可申請を提出し、農地でなくなれば、小屋を建ててOKです

【都市計画法】建てられる建築が決められている



土地が「都市計画区域」に指定されている場合は、必ず「建築確認申請」が必要です。

都市計画法という法律で、立てる建築物の高さや位置を規定しています。

これは商業施設や道路など、将来の都市計画を見込んだ法律です。

新たに建てる建築物が、周辺の日当たりを遮らないか。

これから作る予定の道路や大型施設から十分な距離が離れているか。

都市部で小屋を建てる場合に注意が必要です。

地方都市であっても、商店街や住宅街なら都市計画区域に指定されていることがあります。



確認申請書には、様々な図面も添付する必要があります。

  • 建物を建てる位置を示した「配置図」
  • 周辺への日照時間を示した「日影図」

配置図は、建物が道路に近すぎないかを確認するための図面です。

近隣の道路に拡張される予定があれば、建てる場所を変更する必要が出てきます。

日影図は、新たに建てる建築物が一日に作る日陰の位置を示す図面です。

高層建築の場合はもちろん、低層建築でも、既存の建物が日陰になりすぎないかを確認します。

建築確認申請は、建物の安全性を確認する「建築基準法」でも必要な書類です。

【建築基準法】建物の安全性が決められている



建物の安全性のために定められている法律が「建築基準法」です。

地震や台風で倒壊してしまうような建物ではないことを確認します。

住宅であれば「衛生」「採光」「換気」といった健康を守る基準もあります。

建築確認申請を提出しなければいけない条件は3つ。

  • 基礎を作って「地面に固定する建物」
  • 電気や水道などの「ライフラインを引く建物」
  • 建築面積が「10平米以上の建物」

10平米とは約3坪、6畳間くらいの広さです。

ですから、6畳より小さな小屋を建てるなら、建築確認申請が必要ないこともあります。

  • 庭に設置する物置小屋
  • 犬小屋
  • カーポート
  • ガレージ

こういった小屋の場合は、申請の必要がない場合がほとんどです。

ただし自治体によっては「届け出」や「許可」が必要な場合があります。

ですから役場などで事前に確認しておくほうが安心です。

建築基準法に適っているかどうかを調べる書類が「建築確認申請」と「建築工事届け」。

図面を添付して役所に提出すると、専門家がチェックしてくれます。

建築確認申請の仕方

建築図面

確認申請を代行してくれる業者もあります。

自分で申請するのも難しくはありません。

ただ面倒なだけ。

申請には図面、表、計算書など多くの書類が必要です。

素人には難しそうに感じる確認申請。

でも届け出をしてチェックを受けたほうが安全な小屋を作れます。

【確認申請に必要な書類】


  • 敷地と周辺道路などを描いた「付近見取り図」
  • 敷地と建物の「配置図」
  • 建物そのものの「平面図」「立面図」「仕上げ表」「換気計算」

換気計算とは「換気口」「窓」「出入口」など開口部の合計面積のこと。

建物の用途によって開口部の面積が定められています。

  • 人が住むなら部屋の広さの1/7以上
  • 工房や作業場なら1/20以上



建物や周囲の図面は、申請するしないに関わらず、作ったほうが失敗を防げます。

【建築確認申請にかかる日数】



申請したら「許可が下りるまで」は建築できません。

書類と図面を提出してから許可が下りるまでには「2~10日」くらいかかります。

許可が下りない場合には指示に従って、設計し直したり建てる場所を変更します。

建物が完成した時には、4日以内に「完了検査申請」を提出します。

検査を受けて「検査済証」が発行されて初めて小屋を使えるようになります。

とても面倒だし時間もかかります。

でも素人だからこそ、専門家にチェックしてもらったほうが安心。

安全を確認したほうが後々後悔しないで済むはずです。

小屋を自作する時に必要な建築の基礎知識

木造軸組み工法

小屋を自作するには事前準備が大切。

どんなに小さな小屋でも、手順を考えないと失敗します。

失敗すれば、安い材料とはいえ無駄になってしまいます。

  1. 【工法】どんな建て方をするかを決めておく
  2. 【平面図】図面を描いておく
  3. 【整地】地面を平らにならしておく

まず小屋づくりの手順を考えるために「建て方」を決めておきます。

そのためには「図面」を描いておくと手順通りに建てやすくなります。

必要な木材の寸法や量を、無駄なく割り出すこともできます。

建てる前に地面をならして平らにしておくことも大事です。

【工法】どんな建て方をするか決めておく



木造建築の建て方には様々な工法があります。

素人でも分かりやすいのが「ツーバイフォー工法」と言われます。

地面の上で4枚の壁を作り、それを立ち上げて箱を作るイメージだからです。

使う木材が「2×4インチの規格品」のためツーバイフォー工法と呼ばれます。

日本の木造建築で使われてきた「軸組み工法」でも、ツーバイ材を使うことができます。

ツーバイフォー工法と軸組み工法は、材料の違いではなく建て方の違いです。

●ツーバイフォー工法と軸組み工法の違い

アメリカで考案されたのがツーバイフォー工法。

日本で伝統的に建てられてきた木造建築は軸組工法。

違いは「壁」で支える構造か、「柱」で支える構造かという点です。

ツーバイフォー工法は、地面の上で壁を作ってから立ち上げ「壁」で建物を支えます。

立ち上げた4枚の壁を基礎に固定し、箱を作ってから屋根を乗せます。

ツーバイフォー工法は地面で壁を作るため、素人でもイメージしやすい。

壁で支える構造のため、地震の揺れに強いという点から日本でも人気が出ました。

軸組み工法は、基礎の上に垂直の柱を立て固定し「柱」で建物を支えます。

まず柱を立てて水平の梁を取り付け、屋根を乗せて、壁板を打ち付けていきます。

柱だけ立てた段階で屋根を乗せるため、工事中に雨が降っても建物内が濡ません

雨の多い日本では、とてもメリットがある建て方です。

構造さえ解れば、軸組み工法も難しいわけではありません。

●ツーバイ材のサイズ

規格品のツーバイ材を使えば、大工さんのような技術がなくても建てられます。

あらかじめ幅や厚みが同じ大きさに揃っているので、木材を加工する必要がありません。

ツーバイ材はホームセンターで購入でき、価格も手ごろ。

長ささえ切って調節すれば使えます。

2×4(ツーバイフォー)というのは、厚さ2インチ幅4インチの板のこと。 

実寸は厚さ1.5インチ(3.8cm)、幅3.5インチ(8.9cm)。

だいたい4×9cmです。

ツーバイ材には、2×4の他にも色々なサイズがあります。

  • 1×4(1.9×8.9cm)
  • 2×6(3.8×14.0cm)
  • 2×8(3.8×18.4cm)
  • 4×4(8.9×8.9cm)

いずれも工場で生産される規格品。

サイズの狂いが少ないため使いやすい木材です。

多くがパイン材(松)などの針葉樹が使われています。

針葉樹の板は柔らかくて切りやすいことがメリット。

釘やネジを差し込みやすいので、加工も楽です。

●インチとフィートの長さ

ツーバイフォー工法が始まったアメリカでは、今もフィートが使われています。

ヤード・ポンド法で使われるのがインチとフィートで、12進法で表されます。

  • 1インチ=2.54cm
  • 1フィート=12インチ(30.48cm)
  • 1ヤード=36インチ(91.44cm)

1インチは、昔の日本や中国で使われていた1寸と同じくらいの長さ。

インチも寸も「男性の親指の幅」を基準としています。

1フィートは、1尺と同じくらいの長さ。

男性の足の大きさが基準で、約30cm。

1尺は親指と人差し指を広げた長さの2倍で、尺取虫のように指を動かして計った長さです。

メートル法が使われるようになってから1尺=1/3mと定められました。

【平面図】小屋の図面を描いておく



建築確認申請を提出しなくとも、図面は描いておいたほうが便利です。

どれくらい木材が必要かなど見積もりできます。

完成イメージがあると失敗も防げます。

床面を描いた平面図と、4面の壁を描いた立面図だけでも十分。

壁面を描いた立面図には、出入り口の大きさや位置を描いておきます。

ツーバイ材を使うなら図面もインチ単位で描いたほうが合理的。

方眼用紙の一マスを2インチとして描けば、ツーバイ材での図面が描けます。

実際に施工する時にもインチ単位のメジャーを使うと便利です。

インチとセンチの両方が記載されているメジャーを長年、愛用しています。

 

【整地】地面を平らにならしておく



図面ができて、材料も調達したら、建てる場所の整地です。

生えている雑草を引き抜き、地面に埋まっている石やゴミを取り除きます。

そうして凹んだ部分には土を埋め戻して、平らにならしておきます。

庭や菜園の下地作り~地表を綺麗に整えて足元を安定させる

【整地】地面を平らにならす方法と便利な道具

庭や菜園を作る時に、まず必要なのが整地です。地面には凸凹があって平らではありませんし、水平でもありません。

地面が水平でなければ小屋が傾いてしまうので、水平を確認しておくことも大事です。



小屋を自作する手順

ウッドデッキ基礎

地面が整ったら、いよいよ小屋作りに着手。

ウッドデッキの上に「壁」を立て、「屋根」を載せるイメージです。

【基礎を作る】



基礎はしっかり固定したほうが安全。

コンクリートブロックなどを地面に置いただけでは不安です。

台風や竜巻で吹き飛ばされたり、大雨で流される危険性があります。

小屋の基礎には、コンクリート製の「束石」を置くのが簡単。

ウッドデッキなどを作る時に使う束石がホームセンターなどで安く買えます。

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基礎工事が最も面倒で難しい部分ですが、最も大事な部分。

建物を作ってしまってからでは修正がききません。

基礎工事については、実際に小屋つくりをした方の体験記が参考になります。

コンクリートで本格的な基礎作りをした体験記が「DIY日曜大工で家を作る」というサイト。

中でも「セルフビルドを一人でやるために」という記事は非常に参考になります。

様々な工夫が紹介されています。

コンクリートを使わず、地面に柱を立てる掘立小屋の体験記が「小屋大全」というサイト。

単純にコンクリートブロックを地面に置いただけ、という体験記も。

なんだか自分でもできそうな気がする『自作の小屋で暮らそう』という本。

基礎を作らず、電気も水道も引かずに暮らしている体験記。

確認申請の書類提出が面倒だからという理由からです。

材料もホームセンターで買ってきたものばかりなので、非常に簡単そう。

ただ台風や大雨で流されていないのか、ちょっと心配です。

 

【土台を水平にする】

水糸

基礎の上に土台を作っていきますが、ここで水平を確認しておく必要があります。

台が水平になるよう目印として付けておくのが「水糸」です。

小屋の4隅の外側に杭を打っておき、水平の高さに水糸を縛り付けておきます。

四隅に立てる杭は「地上30センチ」くらいの高さがあれば十分です。

水平の出し方

傾斜地であっても水平を確かめることができます。

水は必ず同じ高さで止まるからです。

使うのは「透明ビニールホース」。

まず2本の杭にホースの両端を縛り付けます。

ホースに水を満たすと両端の同じ高さで水が止まります。

その高さで杭に印をつけておき、そこに水糸を縛り付ければ水平になります。

【柱を立てる】

基礎と根太

基礎石を置いて水平を確認したら「束石」の上に「柱」を立てます。

束柱とは、床下を支えている短い柱のことです。

ツーバイフォー工法では、壁を1枚ずつ作ってから立ち上げ、床に繋げます。

小さな小屋でも1枚の壁を立ち上げるには大人2人で作業しなければムリ。

一人で作業した『自作の小屋で暮らそう』の著者の場合。

壁面の柱だけ地面で作ってから立ち上げていました。

そうして柱だけの箱ができてから壁板を打ち付けたわけです。

一人で作業するなら軸組み工法のほうが楽かもしれません。

柱を立ててから、柱の間に壁板を打ち付けていくからです。

柱を立てたり、柱と根太を繋げたりする時に便利なのがL型の金具。

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シンプソン金具」というもので、L型、コの字型、様々な大きさと形があります。

【床を作る】

ウッドデッキの床

床下に立てた束柱に「根太」という横板を打ち付け、そこに床板を乗せていきます。

根太の取り付けができたら、あとは床板を上に乗せてクギやネジで止めつけていくだけ。

根太は直に床板を乗せる部分なので、必ず水平を確認しておくことが必要です。

水を入れたペットボトル

水平の確認に使える「水を入れたペットボトル」

  1. ペットボトルの縦中心に油性ペンで線を引いておく
  2. 中に半分くらい水を入れる
  3. ペットボトルを横向きに置く

水は必ず地面に対して水平になるので、水平になっているかどうか分かります。

【壁面を作る】

壁面工事

壁面は「窓」や「出入り口」などの「開口部」を除いて板を止めつけていきます。

窓やドアなど開口部は「幅90cm」。

両端に柱を立てておきます。

窓の上下には、柱と柱の間に「30cm」間隔くらいで柱を立てて補強します。

ツーバイフォー工法の場合は、地面に柱を並べて繋ぎ合わせていきます。

軸組み工法の場合は、柱を立てて屋根を作ってから壁板を打ち付けていきます。

柱の上部に「根太」を取り付けて柱同士を繋げ、その上に屋根を乗せます。

●出入り口にドアを取り付ける

ドアは自作することも可能です。

薄い「細板」で枠を作り、「ベニヤ板」を貼り付けるだけ。

市販のドアを参考に、自由にデザインしてみるのも楽しいと思います。

ただ自作の場合、きっちり作れるかどうかは、自分の力量によります。

室内用「市販のドア」なら1~2万円くらいで買えます。

●窓をつける場合

作業場や趣味の部屋として使う小屋なら、窓もほしいところ。

壁の柱や根太の間に窓枠を取り付け、窓はアクリル板などで自作できます。

自作の窓やアクリル板では強度が心配。

そんな場合は市販の窓が便利。

【屋根を作る】

屋根の根太

壁や柱が立ち上がり、箱ができたら屋根を付けます。

屋根に傾斜をつける場合。

天井部分の根太に傾斜に合わせた柱を立てる必要があります。

高さを変えた短い柱を立てて、その上に横板を打ち付けて固定。

柱と根太を取り付けたら、ベニヤ板や構造用の板を打ち付けます。

見た目や耐寒性・大暑性を気にしなければ、根太の上に「波板」を打ち付けるだけでOK。

ルーフィング

屋根板の上に付ける「ルーフィング」。

耐久性や快適性を高めます。

接着剤とクギで貼り付けていくもの。

薄くて軽いので施工も楽です。

色やデザインも豊富です。

屋根材としては「アスファルトシングル」がポピュラーです。

ルーフィングを貼る前に、まず防水シートを敷いておくと雨漏りを防げます。

【自由に塗装して仕上げ】

カラフルな物置小屋

小屋が出来上がったら、あとはペンキを塗って仕上げるだけ。

外壁や窓枠には「屋外木部用」の塗料を使います。

価格が高いフッ素シリコン塗料のほうが長持ちします。

安いアクリルウレタン塗料なら、数年ごとに塗り替える必要があります。

真っ赤な物置小屋

図面を描いて、基礎を作って、柱を立て、壁を作り、屋根を乗せる。

小さな小屋でも、初心者にはハードルが高い作業です。

実際に図面を描いてみるのは楽しい時間でした。

とはいえ私は、模型を作っている段階で挫折しました。

必要な材料を見積もりをしてみると、結構な費用がかかることも分かります。

一から作るとなると電動工具なども必要です。



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