七草粥とは、健康を維持するための暮らしの知恵でした。
体調を崩しがちな季節の変わり目に、体調を整えるからです。
例えば風邪気味で弱った胃腸を休めるなどの効果があります。
お月見の時に飾る秋の七草は観賞用ですが、食べられる草です。
春の七草、秋の七草として知られる草は、どれも身近に生えていた雑草。
雑草には食べられるものが意外と多くあります。
春の七草とは

春の七草とは「セリ」「ナズナ」「ゴギョウ」「ハコベ」「ホトケノザ」「スズナ」「スズシロ」
1月7日に「七草粥」にして食べます。
7種類の野菜を刻んで粥に入れるだけなので、作るのも簡単です。
スズナとはカブのことですが、「ノビル」とする説もあります。
スズシロは大根ですが、「ヨメナ」とする説もあります。
【セリ】

「茎」と「葉」は春に収穫しておひたし、粥などに。
「根」は春に収穫して「酢味噌和え」に。
冬は「葉」「茎」「根」全てを「鍋物」に使えます。
6~7月に全草を刈り取って乾燥させると保存できます。
入浴剤にすると「血行」「リウマチ」「神経痛」に効果的。
煎じて飲むと「食欲増進」「体を温める」「胃や肝機能を高める」「利尿効果」があります。
セリと間違えやすい「ドクゼリ」「キツネノボタン」には注意が必要です。
どちらも有毒で食べられません。
見分け方は「香り」「根」「花」です。
セリには、同じセリ科のパセリに似た、独特な香りがあります

ドクゼリには香りがありません。
掘り上げると地下茎があるのがドクゼリ。
根が緑色で太く、タケノコのような節があります。
セリの根は白く、細いヒゲ根がある点が違います。
セリの近くに生えていることがある「キツネノボタン」。

葉だけ見るとセリと間違えやすい草です。
けれど花の色と形が全く違います。
セリは白い花が咲きます。
キツネノボタンは有毒。
皮膚に付くとかぶれることがあります。
【ナズナ(ぺんぺん草)】

春に「葉」を収穫。
刻んで塩茹でして粥に入れます。
花が咲いている時期に全草を刈り取り。
天日干し又は陰干しして保存。
煎じて飲むと様々な薬効が得られます。
【ゴギョウ(ははこぐさ)】

冬に「葉」を収穫。
茎が立ち上がる前に。
地面に広がった若い苗を食べます。
粥、草餅、草団子など。
花が咲き始めた時期に全草を刈り取ります。
天日干しして煎じて飲んだり、うがい薬にしたりできます。
【ハコベ】

春の「葉」を「おひたし」が美味しい。
花が咲いている時期に「茎」と「葉」を収穫。
乾燥させて同量の「塩」を混ぜて歯磨き粉に。
歯槽膿漏を防ぎます。
【仏の座(コオニタビラコ)】

春に「葉」を「粥」にすると美味しい。
胃腸、食欲増進に効果的。
本州から九州に生えるキク科の草。
葉は長さ4~10cmで幅1~2cm。
柔らかな葉の間から長さ4~25cmの茎がたくさん伸びます。
茎の先端には、3~5月に直径1cmくらいの黄色い花が咲きます。

雑草の「ホトケノザ」は有毒です。
シソ科で全く別の植物。
本州から沖縄に自生している草です。
葉は左右対称に付いていて、切れ込みがある丸い形。
3~6月に薄紫色の花が咲きます。
【ノビル(スズナ)】

春の「葉」をネギやニラの代用に。
「球根」はいつでも収穫できます。
酢味噌和え、味噌汁、ラッキョウの代用に。
夏に球根を掘り上げて天日干し。
乾燥させて保存できます。
煎じて飲むと薬効が得られます。
【ヨメナ(スズシロ)】

キク科の多年草
田んぼの畦道などに生える草
湿った土を好みます
「若芽」を御飯に混ぜると美味しい
地下茎で、どんどん増えます。
秋の七草とは

秋の七草は「ハギ」「オバナ」「クズ」「ナデシコ」「オミナエシ」「フジバカマ」「キキョウ」。
それぞれ薬効があり食べられますが、秋の七草は主に鑑賞用です。
食用より薬用または家畜の飼料にされています。
【ハギ】

咳止め、去痰、胃痛、下痢に効果的。
【ススキ】

イネ科の多年草
日当たりの良い場所に生えます
茅葺き屋根の材料
長い穂が観賞用に使われます
家畜のエサにもなります
【クズ】

根が葛根湯の原料
初夏に掘り上げた根を乾燥させます
風邪、肩こり、神経痛、発汗、鎮痛、胃腸不良、下痢に効果的
秋から冬に収穫した根は葛粉に
葛湯、葛餅、葛きり、和菓子、料理のとろみ付けに使われます。
春から初夏の「つる先」「花」も食べられます。
咲き始めの花を乾燥させたものにはイソフラボンが含まれています。
【ナデシコ】

ナデシコ科の多年草
カーネーションの元型です
4~8月に開花
様々な品種があります
食用にもでき、むくみ、高血圧に効果的と言われます
【オミナエシ】

オミナエシ科の多年草
草丈60~100cm
8~10月に開花
切り花として使われます
漢方にも用いられ、消炎、膿の排出に効果的と言われます。
【フジバカマ】

キク科の多年草
草丈100~150cm
8~9月に開花
日当たりの良い場所に生え
やや湿った土を好みます
漢方にも使われ、糖尿病、体のかゆみに効果的と言われます。
【キキョウ】

キキョウ科の多年草
草丈50~100cm
6~9月に開花
根を漢方に使います
咳止め、去痰、のどの痛みに効果的。
身近に生えている食べられる雑草

雑草には食べられるものも多く、美味しいものもあります。
とはいえ有毒の草もあるので、しっかり見分けることが大事です。
【アザミ】

キク科の多年草
春の「若芽」を味噌汁や天ぷらに
「根」も天ぷらや味噌漬けにできます
アザミの根が「山ゴボウ」
市販されていることもあり、ゴボウのようにキンピラにできます




紛らわしいのが「ヨウシュヤマゴボウ」
ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属の多年草
こちらは有毒なので食べられません
アメリカ原産の帰化植物で高さ2メートル
茎が赤く、秋にブドウのような実がなりますが、この果実も有毒です。
インクベリーとも呼ばれ、染料として使われることもあります。
染料にした場合も、手袋をして、口に入らないよう注意が必要です。
【シロツメクサ】

見分けやすく安心して食べられる草
どの季節でも摘むことができ
花も葉も食べられます
「葉」は塩茹でして
「花」はサラダに散らすなどして食べられます。
【たんぽぽ】

たんぽぽは「蒲公英(ほこうえい)」と呼ばれ、生薬として使われる薬草。根、葉、茎、花、全草が利用できます。薬効には「美肌」「健胃」「胆汁分泌」などがあります。
葉、花、根、全て食べられる草で、漢方でも使われます
【ツユクサ】

「花」「葉」「茎」が食べられます
6~9月の花が咲いている時期が美味しい
お浸しや和え物に
花が咲いている時期に全草を刈り取って保存
乾燥させて飲むことができます。
【ドクダミ】

どくだみは、葉、花、茎、根、全草が薬草として使えます。どくだみの葉や茎を乾燥させたものが漢方の「十薬」という生薬。主な効能は「殺菌」「利尿」「整腸」です。
乾燥させて煎じて飲むと薬効が得られる薬草です。
入浴剤として浴槽に入れると「あせも」に効きます。
煎じた液を皮膚に塗っても薬効があります。
おすすめ雑草料理の本
和食料理の専門家によるレシピ付きの食べられる雑草図鑑。
季節ごとの雑草を分かりやすく解説してあります。
調理の仕方も書いてあるので、すぐに試せます。
野草の食べ方と薬効が詳しく書かれている本がこちら。
食べられる雑草を知っておくことは、暮らしに役立つ知恵。
その土地の気候に適応して自然と生えてくる山野草は、まさに旬の野菜だからです。
その時期に生えてくる草は、そこに暮らす人間にとっても最適な養分を蓄えているはずです。
有毒で食べられない雑草の見分け方が分かる本も参考になります。

野草には似たものも多くあります。
開花期と新芽の時期では見た目が違うため、間違いがち。

野菜やハーブであっても、部位によっては食べられません。薬草や生薬に使われている植物でも、食べすぎると中毒を起こすことがあります。植物を見分けられず、正しい知識を持たずに、野草を食べるのは非常に危険です。
ちゃんと見分けられない限り、食べない方が安全です。










