あまり手間をかけずに、美しさを維持できるのが、ローメンテナンスの庭です。
さらに、お金をかけない庭づくりなら無理なく続けられます。
庭は、作っている過程も楽しめる時間ですが、面倒な作業も多くあります。
定期的に行う「草取り」「水やり」「剪定」「肥料」といった作業。
「病害虫対策」といったトラブルに対処しなければいけない場合もあります。
そして庭の手入れには、意外と費用がかかります。
肥料、薬剤、水、といった消耗品を買い続けなくてはいけないからです。
自然を活かす庭づくりなら、費用も手間も減らして、楽しむ時間を増やせます。
草取りの手間を減らす庭作り

真夏の炎天下、腰をかがめての草取りなんてしたくありません。
電動カマで刈り取っても、すぐに雑草は伸びてきます。
根ごと引き抜くのが一番ですが、丈夫な雑草は根も深く張っています。
ですから雑草対策はローメンテナンスの庭づくりをするための第一歩です。
雑草が生えない庭づくりと、雑草を活かす庭づくり、2通りの方法があります。
【雑草を生えなくする方法】
雑草を完全に防ぐには、地面を覆ってしまうしかありません。
コンクリートや石を敷き詰めたり、ウッドデッキを設置したりする方法です。
施工費用はかかりますが、雑草は生えてこなくなります。
自分でも施工できるのが、ウッドチップ、砂利、レンガなどを敷く方法です。

雑草を抑えるなら「敷石」「レンガ」「砂利」を敷くのが簡単。コンクリートやモルタルを使わなければ、素人でも施工できます。例えば「砂」でレンガを固定する方法です。地面に敷くだけなら、しっかり固めてしまう必要はありません。
グラウンドカバープランツを植えることでも雑草は減らせます。
【雑草を庭に活かす方法】
雑草をそのまま活用することもできます。
単に草取りの手間が省けるだけでなく、雑草には様々な活用法があるからです。
例えば雑草は、その土地の土質を診断する目安になります。
土の中には大量の種が埋もれていますが、土質に合った種しか発芽できません。
生えている雑草で土質を判断し、そこに合った植物を植えると無理なく育てられます。

庭に生えている雑草は、土の性質を判断する指標にできます。なぜなら土質に合った雑草しか発芽して成長できないからからです。土に落ちた無数の種の中から、環境に合ったものだけが芽を出します。
また雑草はグランドカバーとして使うこともできます。
背が高くなる草だけ抜いていけば、自然と背の低い草が増えて拡がるので簡単。
地面が背の低い草で覆われていると、地表の乾燥が防げるため、水やりの手間も省けます。

背の低い雑草は、抜かずに残すとグランドカバーとして活かせます。背が高くなる草だけ抜いていけばいいからです。地面を覆うように草が生えていれば、他の雑草は生えなくなっていきます。
綺麗な花が咲く雑草なら、そのまま庭に残しておいても構いません。
ちゃんと手入れして育てれば、ナチュラルガーデンにピッタリです。

花が綺麗な雑草は、抜かずに庭に活かすと手間がかかりません。自然と生えてくる草なら、その場所の土質や気候に適応しています。花の少ない季節に咲いている雑草もあります。
雑草の中には、食べられるものが意外と多くあります。
例えば「たんぽぽ」「どくだみ」は薬草としても使われます。
はびこる蔓性の雑草なら、カゴ編み材料にできます。

庭に生えてくる雑草の中には、捨ててしまうのが惜しいものがあります。野菜やハーブのように活用できる草があるからです。市販されているハーブも、原産地では雑草と同じく自然に生えています。
さらに引き抜いた雑草は、地面に敷いてマルチにしたり堆肥にしたりして使えます。

堆肥を作る時に大事なのは、有機物を十分に「発酵」させることです。完熟していない堆肥を土に混ぜると植物の根を傷めることがあるからです。
水やりの手間を減らす庭作り

適度に水分を蓄え、適度に水はけのよい土づくりをすることで、水やりの手間も減らせます。
地中に水分が保たれていれば、植物は根を伸ばして水を吸収できるからです。
鉢植えとは違い、庭の植物に毎日の水やりは必要ありません。
水はけが良いか悪いかを調べるには、深さ10cmくらいの穴に水を注いで浸み込み具合を見ます。
- 指が入る程度の大きさで、深さ10cmほどの穴を地面に開ける
- 水を満たしてから1時間おき、再び水を満たす
- 割り箸などを差し込んで、20分間隔で2回、水位を測る
水位の変化で水が減る速度を判断します。
1時間で4cm以上の水が減っていれば、水はけのよい土です。
水はけの悪い土であれば、湿地性の植物を植えると楽に育てられます。
あるいは粘土を敷き詰めて池にしてしまう方法もあります。
水はけを良くする方法は、土を掘り返してから土底に砂利を敷くことです。
【地表面の乾燥を防ぐ方法】
水やりの手間を軽減する方法は、地表面にマルチングを敷くことです。
ウッドチップなどを敷いてもいいし、刈り取った草を敷いておくだけでも効果があります。
グランドカバープランツを植えておくことでも地面の乾燥を防げます。
雑草を抑える働きもあり、一石二鳥です。

グランドカバープランツとは、背が低く地面を覆うように増える植物のこと。びっしり地面に生えていれば雑草は生えてこなくなります。何かしら植物が生えていることで、地表の乾燥を防ぐ働きもします。
【雨水を活用する方法】
庭に傾斜をつけて「中央部を低く」すると、雨水を有効利用できます。
雨が自然と流れ込んで、庭全体の土を潤すからです。
庭の真ん中に小さな「池」を作っておけば、雨水が流れ込みます。
池に「メダカ」を入れておくと、蚊の発生を防げます。
メダカは雑食で、蚊の幼虫であるボウフラも食べるからです。
水生植物を植え、メダカと一緒に巻貝なども入れると水が濁りません。

ビオトープ(Biotope)とは小さな生態系のことで、ドイツで生まれた概念。語源はギリシャ語の「命(bio)」と「場所(topos)」です。2語を組み合わせた言葉で「生態系の最小単位を表す空間」を表します。
スイレンはメダカと相性が良く、庭の景観も良くなります。

睡蓮と蓮は、似ているようで異なる水生植物。植物の分類も、睡蓮は「スイレン科」、蓮は「ハス科」と別の科に属します。実際に「葉」「茎」「根」「花」の形が、かなり違います。
水場があるとカエルなども来て、庭の害虫を食べてくれます。
肥料のいらない土作り

土が肥沃であれば、肥料を与えなくても植物は元気に成長できます。
自然界では落ち葉や枯れ木などが自然と積もって分解され、土の養分となります。
そんな「堆積」してできる自然な「肥料」が「堆肥」です。
とはいえ植物が、落ち葉など固形物を吸収できるわけではありません。
堆肥は地中に棲む「微生物」のエサとなり、その排せつ物が植物の養分です。
ですから土作りの基本は、土中に有益な微生物を増やすことから始めます。
微生物と共生している植物は、病害虫にも強くなります。

土壌改良に適しているのは「秋」。植物が成長し始める春までに微生物が増え、自然と土質を変えていくからです。宿根草も休眠中なので土を掘り返しても大きなダメージをあたえません。
土中の生物を保つためには、できるだけ薬剤や化学肥料は使わない工夫が必要です。
しっかり土作りをすれば、薬剤散布の手間も省けます。
病虫害を抑える庭作り

病害虫が発生する前に予防ができれば、薬剤散布の手間も省けます。
被害が出た植物は、ほとんど回復できないため、切り取って処分するしかありません。
薬剤も、次第に効果が薄れてきます。
害虫の発生を防ぎ、植物の抵抗力を高めれば、被害を最小に抑えられます。
コンパニオンアニマルは庭の心強い味方です。
肉食昆虫や爬虫類などは植物を食害せず、虫を食べてくれます。
例えば毛虫類を食べる小鳥や、アブラムシを食べるテントウムシなどです。

庭や家庭菜園を無農薬で栽培するなら、天敵を利用すると楽。小鳥などが、セッセと虫を食べてくれます。肉食の昆虫や爬虫類も、植物を食害せず虫を食べてくれます。
安易に薬剤を使うと、生態系のバランスが崩れてしまいます。
虫除けできるコンパニオンプランツもあります。

庭や菜園に植えた植物によって、害虫を防ぐことができます。虫によって、植物の好き嫌いがあるからです。例えば、ハーブの強い香りを嫌う虫は多くいます。逆に虫が好む植物を「おとり」として植え、他の植物を守る方法もあります。
薬剤を使わない方がいいのは、害虫だけでなく益虫や土壌生物まで殺してしまうからです。
土壌生物と共生している植物は、自らの力で回復できる自然治癒力を持っています。
ローメンテナンスの植物選び

ローメンテナンスの庭づくりには、植える植物を厳選する必要があります。
成長後の大きさや性質を考慮しておかないと、剪定や植え替えの手間が増えるからです。
例えばコニファーやオリーブなど本来は大木になる木があります。
常緑樹と落葉樹の配置で、家や庭のエネルギー効率を良くすることも可能です。

方角によって庭木の種類を決めると、家の冷暖房効率も上がります。夏の「日差し」を和らげたり、冬の「北風」を防ぐことができるからです。
狭い庭に適しているのは、大きくならない「雑木」です。
雑木とは材木にならない木の総称で、幹が細いのですっきりしています。
自然のままで綺麗な樹形に育つ木なら、頻繁に剪定作業をしなくて済み管理が楽です。
ブドウやツルバラなど蔓性の植物は、伸びすぎると手に負えなくなります。
パーゴラやフェンスなど誘引する場所を設置することも必要です。

バラは「枝の伸び方」によって「種類」と「植え場所」を決めるのがポイント。枝の伸び方によって「花の付き方」や「株の大きさ」が異なるからです。
気候や環境に合わない植物を植えてしまっても、なかなか育ちません。
庭の「土質」や「気候」に合った植物を選んで植えることは非常に大事です。
土質は改良することができますが、「気温」や「湿度」など変えられない要件もあります。
果樹の多くは南国産のため、北国で育てられる果樹は限られています。
庭植えできない場合は鉢植えにすることで管理しやすくなります。

狭い庭では大きくなる果樹は育てられません。通気性が悪くなると、虫が付きやすくなります。剪定で小さくできればいいですが、枝先を切ると実がならない果樹があります。
ローメンテナンスの庭づくりは、できるだけ自然の力を借りるのがコツです。
生態系のバランスを保てば、植物は自らの力で丈夫に育ちます。